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辺境領に飛ばされた元官僚、数字だけで王国を立て直す 〜廃領再建から始まる、数字と制度の国家経営録〜  作者: 蒼井テンマ


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第15話 廃領は、もう廃領ではない

 辺境領クロフォードは、静かだった。


 かつての荒廃はない。

 だが、祝祭の喧騒もない。


 整えられた農地。

 満杯の倉庫。

 規則正しく巡回する治安隊。


 それらは、奇跡ではなく、日常になりつつあった。


 アレンは、領館の高台から街を見下ろしていた。


「……戻りましたね」


 エリシアが、隣に立つ。


「ええ」


 アレンは頷く。


「人が戻り、物が流れ、数字が回っている」


 それは、彼が最初に帳簿を見た時に描いた理想図だった。

 制度上“死んでいた”領地が、今は確かに息をしている。


「でも」


 エリシアは、少しだけ声を落とした。


「もう、前のような場所ではありません」


「そうだ」


 アレンは否定しなかった。


「この領地は、もう辺境じゃない」


 数日前、王都から正式な文書が届いていた。


 ――統治連合試験区指定。

 ――物流・税制・治安に関する一部権限委任。

 ――定期報告義務。


 紙の上では、栄誉だ。

 現実では、監視でもある。


「自由は、減りましたね」


「その代わり、影響力が増えた」


 アレンは淡々と言った。


「どちらも、使い方次第だ」


 その時、ガルドが近づいてきた。


「周辺領との通行調整、まとまりました」

「連合名義なら、文句は出ません」


「そうか」


 アレンは短く答えた。


 権限は、確かに増えている。

 だが、それは彼個人のものではない。


 制度のものだ。


 その夜。

 アレンは、一人で執務室にいた。


 机の上には、最初に見た帳簿の写しが置かれている。

 赤字。

 人口減少。

 治安崩壊。


 すでに、過去の数字だ。


「……ここまでは、直せた」


 だが、彼は理解している。


 この国は、まだ壊れている。

 一つの領地が立ち直っただけでは、足りない。


 制度は、局所的に正しくても、

 全体では歪む。


 その時、ペンを置いたアレンの脳裏に、王都での会話が蘇る。


 ――前例になる。

 ――管理が必要だ。

 ――英雄にしてはならない。


 彼は、静かに笑った。


「英雄になる気は、最初からない」


 必要なのは、英雄ではない。

 間違えにくい仕組みだ。


 翌朝。

 領内に、新しい掲示が出された。


 ――統治連合設立に伴う、追加人材募集。

 ――物流・計画・監査担当。


 人が集まり始める。

 制度のために働く人間が。


 それを見ながら、エリシアが言った。


「……もう、一人ではありませんね」


「最初から、一人でやるつもりはなかった」


 アレンは答える。


「仕組みは、人がいなければ意味がない」


 遠くで、荷馬車が動き始めた。

 街道の先へ、物が流れていく。


 その光景を見て、アレンは確信した。


 この場所は、もう“廃領”ではない。

 だが——


「ここは、入口だ」


 彼は、静かに呟いた。


「国を、作り直すための」


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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