89話 あるところでは
「ねぇねぇ、あの学年で人気でもトップレベルで人気な小川君があの増本さんに告白したらしいよ」
「本当に!それはビッグニュースだね。でも、確か小川君って付き合ってなかったっけ?」
「うん。確か、学校で唯一のギャル。稲田さんと付き合ってたはず」
ある2年生エリアの校舎において、2人の女子が会話に勤しむ。2人とも目新しい話題が大好きなタイプだ。
「でも、その話ってソースはどこ?」
「それが驚きなんだけど。もう1人の2大巨頭の与田さんなの」
1人の女子生徒は興奮気味に言葉を紡いだ。
「え~。不思議だね。与田さんが何でそんな情報を持ってたんだろう?」
また、2年のある教室では。2人の女子が席に座り、向かい合って話す。
「小川君の彼女が増本さんに八つ当たりしているらしいの。自分の彼氏を誘惑したとかで」
「それはひどいね~。もしかして、あの増本さんの趣味に拡散もその人のせいかな。確か、オタク的な趣味を持ってるとか」
「おそらくね。私も最初はネット小説とかオタク臭いと思ったけど。よくよく考えれば、趣味はその人の自由だよね」
「そうだよね。今さら気づいたけど、趣味は個人の自由だよね!」
また、ある人気のないところでは。
「なんだい。いきなり呼び出して。あまり時間があるわけではないよ」
小川は目の前に立つ3人の男子をそれぞれ目視した。チラチラ瞳を動かして。
3人の剣幕に少なからず、普段よりも冷静を欠く。口調がわずかに速い。
「・・・おい」
1人のリーダー格の男子がドスの効いた声と同時に、小川の胸ぐらを掴んだ。小川のカッターシャツがクシャっと歪む。
「ど、どうしたんだい?暴力は反対だな」
小川からわずかに焦りが透ける。少なからず、相手方が予想外の行動を取ったのだろう。
「うるせえ!今日はただでは返さないからな」
男子3人が圧力を掛けるように、凄みのある表情で接近した。3人共まともに取り合うつもりは皆無だ。
小川は明らかにひるんだ。
「必ず吐いてもらうぞ小川。あの増本さんがお前を誘惑したかどうかをな」
リーダー格の男子はチャっとポケットからコンパクトなボイスレコーダーを取り出した。準備は万端のようだ。
ごくっ。
小川は緊張から、生唾を飲み込む。その音は不思議と半径1メートルほどに行き渡った。
だが、男子3人は特に気に留めなかった。
ただプレッシャーを与え続ける。目的を達成するために。
結局、小川は3人の圧力に屈し、真実を口にすることになった。その音声は明瞭に男子生徒のボイスレコーダーに記録された。




