86話 手応えのある情報
『かずくん!有益な情報が手に入ったよ!」
昼休みの半ば頃。
莉菜からSNSで一輝宛にメッセージが届いた。
(莉菜からか。早いな。それに手応えもありそうだな)
一輝はスマートフォンのロックを解除し、SNSを起動させる。
ロゴマークの表示後にトーク欄が現れる。
『そうなんだ。その内容はどういったものなの?』
未読無視せず、すぐに既読をつけた。それから、簡潔な文章で返答する。
『うん。クラスメイトの女子から聞いた話なのだけど。どうやらその子は稲田愛羅って人から聞いたらしいよ』
莉菜もすぐに既読をつけ、返信も早い。これはいつものことだ。
(稲田愛羅?耳覚えのない名前だな)
一輝は脳内で記憶される見覚えある同級生の顔を探索した。しかし、稲田愛羅の顔に関する記憶は脳内に存在しない。
一輝の知る同級生の顔と名前が少なすぎる事実も起因した。
ブーーー。
再び、彼のスマートフォンが振動した。
『その稲田愛羅って人は私の隣のクラスに所属してるらしいの。しかも、彼氏持ちだって』
一輝は文章を認識し、固まる。
同時に1つの疑問も抱く。
(どうしてこの稲田愛羅は増本のマイナス情報を他人に流したのだろう?特にメリットがありそうもないのに)
一輝にとって不思議だった。その上、彼氏持ちだという点も気に掛かった。
彼氏持ちなら尚更、羽矢を悪く落とすような行為を取る必要はない。
なぜなら、彼氏からの評価も下がる可能性があるのだから。
『その彼氏の名前はわかる?』
とにかく問いを投げ掛けるしかない。
何か良い情報が見つかるかもしれないから。
『う〜ん。そこまではわからない。でも任せて。今日中には見つかるから!」
莉菜はやる気を示すように、猫が胸を張るスタンプを送信した。
さらに数秒後。
莉菜がえっへんと胸を張る写真も送られた。豊満な胸がより強調される。
カメラのアングルから自撮りであると容易に推測できた。
「そこまでやる気を証明しなくても十分莉菜の気持ちは伝わってるよ」
一輝はクラスメイトには一切聞こえない声で呟く。自然と溢れた笑みをキープしながら。
『お願い!色々やってくれてありがとう!本当に頼りになるね!!』
『えへへ。かずくんにお礼言われた。てまも褒めても何も出ないからね。優しくすることぐらいしかできないよ?』
文面からも莉菜のデレる姿が想像できた。
頬はだらしなく緩み、おそらく口角も上がっているだろう。
『うんうん。それだけで十分。正直に言えば、何も必要ないからね』
一輝は素早くタイピングを終え、スマートフォンの電源を落とす。
一旦オフにし、完全には切っていない。
「随分トークでやりとりしていたのね?増本さんか与田さん?それとも妹さん?」
松本は丁度いいタイミングで一輝の席を訪問する。まるで図っていたかのように。
「莉菜だよ。与田莉菜。それにしても、まさかずっと観察してたの?」
一輝はわずかに顔をしかめる。額にわずかに2重ほど皺も寄った。
SNSのやり取りを行う動作を観察されていた。少なからず気分の良いものではない。
「ごめん。でも少ししか観察してないの。これは嘘じゃないわ」
松本は一輝の微妙な気分の変化を察したのか。素直に謝る。
顔は申し訳なさ気だ。
「あ、謝らなくていいよ。別に怒ってるわけではないから」
一輝は顔の前で両手をバタバタさせた。申し訳ない気持ちも感じた。
無理に謝られせた感も否めない。
「そう。ならよかったけど」
松本の表情がわずかに和らぐ。まだ普段より硬い。
「それで、1つ聞きたいんだけど。松本さんって稲田愛羅って人を知ってる?」
一輝は話題を変えた。空気を敏感に察し、意図的に話を振った。
(さ〜て、どう出るか。松本さんが詳しく知ってればラッキーだよな)
「あ〜。学校で有名な同級生のギャルね。知ってるわよ。それに確か、学校で有名で人気な小川秀明と付き合ってるはずよ」
松本は一輝の求めてた以上の情報を提供する。
「本当に!それって本当!」
話題に飛びつく女子高校生のように、一輝は前のめりになった。
自然と一輝と松本の距離が縮まる。
「ち、・・・近いわよ。ちょっと離れて」
松本はさっと視線を逸らす。顔もほんのり赤く染まっていた。
「あ、ごめん。ついテンションが上がって」
松本にたしなめられ、一輝は一定の距離を作った。
「それでより詳しく教えてくれないかな?稲田愛羅と彼氏の小川秀明について」
「ええ。構わないわよ」
松本は好意的にかぶりを縦に振った。
⭐️⭐️⭐️
久しぶりに復活しました!
本日から継続して更新していきますよ‼️




