81話 崩れるイメージ
愛羅が羽矢を廊下に呼び出して1日が経過した。
羽矢は当たり前のように登校した。昨日は彼女に何も起きなかった。
昨日、愛羅は羽矢にオタク的な趣味を暴露すると宣言した。だが、今のところ周囲に知れ渡っている様子はない。
羽矢はいつも通り席に着き、教科書やノートなどをカバンから机へと移動させる。
「ねえ、増本さん」
そんな最中、クラスメイトの女子生徒が声を掛ける。多少なりとも緊張しているのか。その女子生徒の表情はぎこちない。
「増本さんはオタク系の小説をネットで読むのが趣味なの?」
女子生徒は羽矢の顔をじろじろと見ながら訪ねる。
「あ、ああ。オタク系かどうかわからないが。アニメ系の小説をネットで毎日読む趣味はあるな。ライトノベルというやつだな」
羽矢は具体的な名前を出して、相手に理解しやすいよう説明した。彼女はライトノベルという言葉を出せば、相手が容易に理解できるはずだと思ったのだろう。
「う、うん。そうなんだ。へぇ~~知らなかった」
女子生徒はあからさまに白々しく答える。それからまるで引いたような目を向けた。そして、女子生徒は逃げるように早々と友人の元に駆け寄ってしまった。
その女子生徒は時折ちらちら羽矢に視線を走らせ、友人とひそひそ話を繰り広げる。声が小さく、その内容は羽矢の耳に届かない。
羽矢は怪訝そうに首を傾げる。まるで、何なんだ?っと疑問を抱いたような顔をする。
その後も、羽矢は他の女子や男子にも同じことを聞かれた。彼らは全員似たような反応を見せた。中には「イメージが崩れちゃう」と口にする人物もいた。
皆が羽矢の趣味を好意的に受け取らなかった。
本日、声を掛けてきたすべての生徒達が羽矢に対して似た反応を露わにした。
それは当然の結果だったのかもしれない。
羽矢の容姿は端麗である。その上、クールな雰囲気もあり、近寄り難い印象もある。そんな人間が『オタク』だと聞けば、誰だって違和感を覚えるだろう。今までのイメージが崩れてしまうのも無理ない。
羽矢は同じような反応を目にし、嫌でも理解した。皆、愛羅の暴露を聞き、それが事実かどうかを確かめに来ているだけなのだと。
しかし、現時点で羽矢はメンタル的に落ちなかった。なぜなら、趣味で引かれた経験が小学生時代に存在するためだ。
だが、耐性が完全にできているとは言い難い。
それにも関わらず、生徒達はどんどん羽矢の元に押し寄せる。
留まることなく。
休み時間になれば必ずと言っていいほど誰かしら人間が訪れるのだった。




