74話 体育祭①
2日間の文化祭が終了した。今日は体育祭の日だ。体育祭は学校に設けられた大きなグラウンドで実施される。このグラウンドは普段、野球部やサッカー部が利用している。
今日は体育祭のため、グラウンド内にはそれぞれのクラス用、体育祭に関与するいる委員、教員用のテントなどが多く存在される。
西城高校の体育祭ではA、B、C、D、E、F、Gのブロックに分けられ、優勝を競う。各ブロックには1年、2年、3年のクラスが1つずつ所属する形を取る。
どのブロックに所属しているのかを明確にするため、生徒達は、Aブロックは赤、Bブロックは黄色など、色の付いたハチマキを頭に巻き付ける。
一輝の2年6組はAブロックに在籍する。そのため、一輝は学校規定の体操服に赤のハチマキを身に付ける。
「小・中・高と何回も体験しているけど、体育祭の開会式は相変わらず面倒くさいな・・・」
一輝は太陽の陽を浴び、あぐらをかいて座りながら、ぼそっとつぶやく。周囲には一輝と同様、グラウンドの上に座る生徒達がいる。
結構長い時間を掛けて開会式が終わると、準備体操が行われる。
いつもの体育では面倒くさそうに行われる準備体操も、体育祭の効果もあって、ほとんどの生徒が楽しそうに取り組んでいた。一輝は周囲とは異なり、平常運転で取り組んだ。
10分ほどして入念に行われた準備体操が終了し、生徒達はクラス専用のテントに移動する。多くの生徒が一斉にテントに向かう。一輝もその1人だ。
「第1種目の100メートル走出場にする生徒は選手待機場所に集まってください!100メートル走に出場する生徒は選手待機場所に集まってください!」
アナウンスがグラウンド内に響き渡る。選手達がグラウンド内に設置された待機場所に向かう。
(俺は借り物競走しか出場しないわけだし、それに興味もないから見る必要ないか)
一輝はテントの下に敷かれたブルーシートから立ち上がり、靴に履き替える。
それからテントを抜け、グラウンドも抜けて、最寄りの自動販売機に向かう。
そこは近くに空手道場があった。
「何にしようかな」
一輝は誰もいないことを良いことに、独り言を呟きながら、自動販売機の商品を物色する。
しばらく考えた後、一輝は500mlの麦茶を購入する。ガタンゴトンッと自動販売機からペットボトルが吐き出される。
「おっ!朝元も飲み物を買いに来たのか?」
羽矢が後方から一輝に声を掛ける。
「ああ。増本もそうか?」
一輝は自動販売機からペットボトルを取り出し、羽矢のためにその場から移動する。
「そうだ。喉が渇いたのでな」
羽矢は自動販売機の目の前に進むと、お金を投入し、すぐに水を購入した。一輝の時と同様、ペットボトルが自動販売機から吐き出される。
「一緒に戻るか」
羽矢と一輝は共に歩きながら、グラウンドへと足を進める。
羽矢は歩きながら、ペットボトルを開けようとする。だが、力が上手く伝わらないのか、開けるのに苦戦する。
「開かないの?ちょっと貸して」
一輝は羽矢から水の入ったペットボトルを受け取る。
一輝は力を入れて、ペットボトルを開ける。その結果、カチッとペットボトルのキャップが音を立てる。
「はい!開いたよ」
一輝はペットボトルを羽矢に差し出す。
「あ、ありがとう・・・」
羽矢は歯切れ悪くお礼の言葉を口にする。明らかにぎこちないものだった。
「うん」
一輝は相槌を打つように返事をする。
そのまま、2人は無言で並びながら歩く。
「なんだが複雑な気持ちだな。まさか、ペットボトルを朝元に開けてもらうなんて」
羽矢は恥ずかしそうに頬を染める。普段見られない珍しい姿だった。
「いや、本当に意外だった。まさか、増本がペットボトルを開けられないなんて」
一輝は意地悪な笑みを浮かべながら、羽矢をおちょくる。
「な!?ば、はかにしてるのか!」
羽矢は焦った様子でらしくない声をあげた。




