22話 仲良かった男子生徒2人への言葉
2時間目終了後、今日もいつものように羽矢と莉菜が一輝の教室を訪れた。
相変わらず、2人共上機嫌で一輝に話掛ける。
「朝元、先ほど私のクラスの授業は数学だったのだが、やはり数学はわかったとしてもおもしろくないな」
羽矢は一輝の目をしっかり捉えながら、淡々と言葉を紡ぐ。
「なんだよ。それって俺に対する自慢か?俺が数学嫌いで苦手なことをいいことに」
一輝はじろりと軽く羽矢を睨んだ。
「そうだったな。朝元は数学が大の苦手な上、嫌いだったな。でも、勘違いしないでくれ。悪気はない。私も本当に数学という科目は嫌いなんだ」
「本当?優等生の言葉は信用できないよ」
一輝は明らかに怪訝な表情を浮かべた。
「確かに。増本さんは全部の科目が得意なものみたいだもんね。それは正直、羨ましいと思うな〜」
「そうだよ!それに、莉菜は文系科目はダメだっけ?」
一輝が同調の気持ちを示した。
「うん。私は得意で好きな理系科目しかできないから」
莉菜は苦笑いを浮かべた。
「得意科目があるならいいと思うよ。俺は理系科目は一切できない上、文系科目も平均レベルだから」
一輝は莉菜にフォローを入れ、自嘲した。
「確かにな。それは事実だ。中学校からまったく変わっていない」
「うん。申し訳ないけど、私もそう思う」
羽矢と莉菜が共に一輝の言葉に同感した。
「お、おいおい。まさか、同調だけされるとは思ってもいなかったよ」
一輝は本心の気持ちを吐露した。正直、フォローの1つや2つは貰えると思っていた。
「同調する以外選択肢はなかったな。莉菜はどうだった?」
羽矢が視線だけ寄越して、莉菜に問い掛けた。
「私も同じかな」
莉菜はこくんと首肯した。
一輝は彼女達の返答に気分が落ちた。
「そろそろ、時間だし私は退出するとするか」
羽矢は一輝の席から距離を取った。
「うん?まだ休み時間が3分ほど残ってるぞ?」
一輝は気分を回復させ、時計を確認しながら、率直な疑問を投げ掛けた。
「いいんだ。他にも用があってな」
羽矢は背中を向けながら、右手を肩の辺りに上げた。
羽矢は歩をゆっくりと進めながら、片山と仲の良かった男子生徒2人が静かに会話するエリアに到着する。
羽矢と男子生徒2人の目がぴったり合った。
「無様だな!」
羽矢は蔑んだ瞳を作り、鼻を鳴らした。
「ナルシストのリーダーがいなければ、以前より静かでクラスでも目立たない存在になるとはな。まぁ、これも自身の行いが悪かったせいだろうな。大いに反省した方がいい」
男子生徒達は羽矢から紡がれる言葉に驚きを隠せない。このとき、男子生徒達は羽矢が嘘告白について認知していることを理解しただろう。
「それと・・・」
羽矢は目を移動させ、寂しそうにぼっちで座る松本に視線を走らせる。
松本は羽矢の睨むような視線を察知すると、わずかに目を合わせた後、逃げるようにさっと目を逸らした。まるで、ライオンにおびえるチワワのように。
「本当にダサいな・・・」
羽矢は素早く踵を返すなり、周囲から大量の注目を浴びながらその場を立ち去った。羽矢が去った後でも、クラスメイト達は教室の戸を一心に見つめていた。
一方、莉菜はというと、先ほどの羽矢と似た目で松本を視界に捉えていた。両拳を握り、何かに耐えるように。
一輝はその状態の莉菜に気づき、違和感を感じずにはいられなかった。
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