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華のお江戸の振袖小町  作者: 水虎
第陸幕「逃亡」
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第陸幕の壱

新しい話はまず会議から。

 小町部の創部後最初の活動は、突如現れた怪物から生徒たちを避難させるための誘導となった。もっとも、部員のうち4人は実際に前線で戦い、1人はそれをサポートしてたのだが。

 しかし、当初小町部の最初の活動になるはずだった「依頼」はまだ終わってはいない。その日は小町部の活動日ではなかったが、その一件である「満開市での酒屋の宣伝」についての会議を依頼者とともに部室にて行っていた。進行役はさくら、ホワイトボード書記はあおい、ノート書記はアイリスが担当している。

「で、清美ちゃんはどんな感じの宣伝をやってほしいの?」

 さくらの投げかけた疑問に、さくらたちのクラスメイトで商店街に古くからある酒屋、岩淵酒店の娘である岩淵清美が口を開く。

「んーとさ、逆にこっちから聞きたいんだけど、みんなは日本酒っていうとどんなイメージを思い浮かべる?」

 未成年で飲酒ができない高校生たちなりに、日本酒というものに対するイメージを膨らませていく。そして、それぞれの意見が部室を飛び交った。

「なんていうか……お上品だよね!」

 まずはかんなが肯定的な意見を出すが……。

「私が思うのは、おっさんがよく飲んでる感じ。特に紙パックのと、カップのやつ」

 この発言に、時たまこれらの酒を飲んでいる桃香はイメージを否定できずむずがゆい感情をぐっとこらえていた。

「(わかる、言いたいことはわかるよ水崎さん、でもあれは私みたいな若い女が飲んでもすっごくおいしいの……! 年齢性別国籍、おいしいものにそんな些細なもの一切関係ないの!!)」

 言いたいことをぐっとこらえている桃香を見て、たまに彼女が仕事帰りに店でカップ酒を買っている姿を目撃したことがある清美は何が言いたいのかをとっさに理解したが内容に関しては一人心の奥底にしまっていた。

「私はCMで着物を着たお姉さんが飲んでるところが浮かんだ。こう、なんというかしとやかに上品なオーラを出しつつ……」

 CMで日本酒の入った杯を飲む女性タレントの真似をして見せるさくら。その再現度には目を見張るものがあった。

「俺も同感。若い人からの人気はいま一つだと思う」

「最近は有名なイラストレーターさんが描いた萌えキャラのイラストをパッケージやラベルに使ったやつが売ってるけど、やっぱり一般的なイメージとしてはみんなの意見と同じかな」

 出てきた意見を聞いた清美は、予想していた通りの答えが返ってきたことに苦笑いする。実際、岩淵酒店の顧客層は中年以上の男性が大半だと彼女の口から語られる。だがそこに、意外な意見が出てくる。

「うちの場合は、お父さんは専らビールなんだけどお母さんは日本酒好きだよ。だから外国人ウケはいいと思う」

 母が外国人であるアイリスから、彼女からしか提供できない意見をもらったことに、清美は手ごたえを感じる。なぜなら、花ヶ咲は一定数の外国人、特に欧米人が住む町であり、アイリスの母もその一人であるからだ。

「うーん、外国人を狙うのももちろんなんだけど、うちの店としては今買ってくれるお客さんを大事にしつつ、やっぱり先生くらいの若い人をターゲットにしたいんだよね。そういえば、先生は普段日本酒って飲みます?」

 この会議の出席者で唯一の成人である桃香に意見が求められた。

「そうね……。カクテルとかビールも好きだけど、日本酒や焼酎も好きね。だって、冬なんか熱燗がたまらないじゃない! ほら、寒い日にお鍋と一緒に……!」

 季節はまだ春だが、熱燗そのもののような熱さでその魅力を語っていく桃香。おかげで聞いている側は暖かい鍋に入ったお湯に浸っている徳利の気持ちを味わっていた。

 桃香の話によれば、彩羽高校の教職員たちにも老若男女問わず日本酒党は多くいるとのことなので、彼女が日本酒党をはじめとする同僚に掛け合ってくれるとのことだ。未成年のため飲酒ができない小町部の面々は、当日はいわゆる宣伝や呼び込みをすることになった。

酒屋さんって減りましたよね。皆さんの家の近くには、ありますか?

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