第伍幕の陸
小町部の依頼人現る。さて、誰でしょう?
すったもんだがあったポスター製作になってしまったが、言葉通りにかりんは翌日にはポスターを作り、6枚印刷して持ってきた。座っているイナリのイラストが活動内容や活動日、依頼先などの情報をフレンドリーな口調で話しているというもので、イラストのモデルの本性さえ知らなければかわいらしいと言えるポスターになっていた。
放課後、生徒会の承認をもらうために生徒会室に行き、アイリスが改めて内容を確認してから、他の生徒会役員が承認印を押す。それから印刷されたポスターを1人1枚ずつ持って校内の各地にある掲示板に張り付けた。全員が張り付け終えて校庭に集合し、本日は解散となった。
それからしばらく経った頃、張られたポスターのうちの1枚を、1人のがっちりした体系の男子生徒が恨めしい視線を向け、恨めしそうに握りこぶしを固く握っていた。
「小町部、ねぇ……」
翌日の昼休み、ポスターを見たという依頼人が弁当を食べていたB組の小町部部員のもとにやってきた。
「さくら、小町部のポスターを見たんだけど、依頼していいかな?」
依頼人第1号になったのはさくらたちと同じクラスの女子生徒、岩淵清美であった。
「依頼人第1号! さて依頼とはなんでしょうか!」
清美は、少し言いづらそうにして依頼内容を話し始めた。
「最近うちの店が商売繁盛とは程遠くなって久しくて、そこでうちの店の宣伝を今度商店街でやる満開市でお願いしたいんだけど、大丈夫?」
満開市とは花ヶ咲の商店街で毎年ゴールデンウィークごろに行われるイベントで、商店街にある全店が参加してたくさんの店が路上出店するほか、バンドの演奏や物産展、模擬店などが行われる青空市場のようなイベントである。清美の家は江戸時代から続いている伝統のある酒屋であるが、ここ数年は若者の酒離れや近辺にスーパーマーケットができたことなどが原因で売り上げが不振であるという。次期店主としてそれに悩んでいたところに小町部のポスターを見つけて依頼したというのだ。
「酒屋さんの宣伝か……。でも私たちは未成年だからお酒飲めないし、どうする?」
「問題はそこだよな……」
「とりあえず放課後アイリスたちに情報共有して、それから先生に相談したらいいんじゃない?」
部員たちは相談を終え、さくらは清美に返事をする。
「部内でちょっと考えるから、返事は明日でいいかな?」
「大丈夫。お願いねー」
案件の検討が決まったところに昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴り、清美は軽く頭を下げてから自分の机に戻っていく。
クラスメイトの岩淵さんが初の依頼人。幸先のいい出だしですね。




