第肆幕の拾伍
ただのオタク女子?そんなことないんだなこれが。
振袖小町の1人がさくらだったことを、サブカルゾーンに到着したばかりのかりんが目撃する。そこに、イナリが駆け寄ってくる。
「さくら!」
喋る小動物までもがいることに、まるで自分がフィクション作品の登場人物になったかのような感覚に陥るかりん。
「あーあ、あんな根性なしに技をかけてやるなんてもう飽きた。あとは、あいつらに任せるとするか」
ハンジールはあくびをしてから、瓦礫が散乱するAKIBAサブカルゾーンの入り口の前にどすんと座り込み、プチッツァとネガボットの戦いの行く末を見守ることとした。
「あれ? あんたたち生きてたの? てっきりハンジールにやられてくたばってたかと思ったのに。ネガボット、やっちゃって!」
「ネガ!」
好き放題暴れまわるネガボットを止めるべく、あおいとアイリスは傷ついた体を押して走る。
ネガボットは両腕のサイリウムの色を右手は緑、左手は黄色に変えてあおいとアイリスに襲いかかる。ダメージが蓄積している2人はよけることができずアイリスは右手、あおいは左手のサイリウムに体を突かれてしまい、吹き飛ばされながら元の姿へ戻る。
夜でも賑わいを見せる秋葉原の町が、一夜で瓦礫の山に変わろうとしていた。
「あおい! アイリス!」
「やっぱり! 水崎さんと土屋さん!」
かりんは2人の正体が自分の推測通りだったことに思わず声が出てしまい、プチッツァに気づかれて彼女の前に向かってくる。
「あんた、なんでここに……!? ま、好都合だからいっか。ねえ、あんたこの前こいつらにひどいことされてたよね?」
黙り込むかりん。
「でもさ……事実でしょ? あたしはしっかり見てたよ。だから……さっきお願いしたことを今やってくれたら、あんたのこと見逃してあげるよ?」
追い打ちをかけるプチッツァに、かりんが啖呵を切る。
「ひどいことされたなんて、私は全然思ってない! むしろ私が迷惑をかけた! 昔を思い出して狼狽えた! だけど、こんな私にそれでも優しくしてくれたみんなと友達になりたい! それに、私の大好きなこの町や、みんなをめちゃくちゃにするような奴の言うことなんて、耳を貸すくらいだったら死んだ方が何千倍もまし!!」
「はぁ!? ただあいつらに暴言吐くだけなのに! だったら何千倍もましな方に……!」
完全に曝け出した本音の叫びに呼応し、かりんが持っていた振袖のカケラが緑色に光り出す。
この光に、ハンジールは苦しみだし、プチッツァも一度経験しているが免疫ができるものではなく前回同様に激痛が全身を走り抜ける感覚に襲われ、ネガボットものたうち回る。
「ちょっと、またなの!? まさか、こいつまで……!?」
「な、なんだこれは!! だが、気合いと根性で……ダメだ、耐えられねえ!」
「ネガァァ!!」
苦しみの中ハンジールは戦場を後にした。それとは逆に、体力を著しく消耗していたさくらたちはこの光を浴びたことで体が軽くなり、立ち上がれるまでに回復する。
眩い光が収まる。するとかりんはその場から姿を消していた。
「……ここは?」
気が付くとかりんは、戦場になってしまった秋葉原ではなく、さくら、あおい、アイリスが白い着物を着た少女に出会った青空と花畑が広がる場所に立っていた。そこに、白い着物を着た少女が優しく語り掛ける。
「あなたの愛したものへの情熱、自分に嘘をつかない誠実さ、そして悪夢に抗い続ける果敢さ。私は感じ取りました。この木の力を、人々と世界を守るために使ってください」
少女の手から、緑色の優しい光がかりんの持つ振袖のカケラへと流れていく。
緑色の光と共鳴するかのように、かりんの振袖のカケラは少しずつ形を変えていき、緑色の丸い水晶がついた簪になっていった。
これまでの傾向で言えば勝ち確定、でもどうやって勝つか見守ってください。




