第参幕の玖
学校が混乱に陥る中、吹っ切れたアイリスさんが第一歩を踏みしめます。
校庭から聞こえる阿鼻叫喚の嵐と、校舎が破壊される爆音を聞いて、さくらとあおい、そして蓮は校庭へと走る。そこを、かんなが呼び止める。
「ちょっと、さくたちどこ行くの!?」
「かんなちゃんはこの校舎に残ってる人たちの避難誘導をお願い! 私たちは手分けして違う校舎の人たちを避難させるから!」
「……りょ! みんな、怪我しないでよ!」
ネガボットが暴れ出した気配を察知しイナリは彩羽高校へ急行、校庭でさくらたちと合流する。その直後、逃げ遅れた編入生のサッカー部員の脚に破壊されて崩れた校舎から出た瓦礫が直撃し、その場から動けずうずくまっていた。彼の脚は紫色に腫れあがり、自力ではとても動ける状態ではなかった。
「俺は彼を助ける! 2人はあいつを!」
「さくら! あおい!」
「「開花!!」」
蓮はサッカー部員に肩を貸してひとまず部室棟へ連れて行き、2人が屋内に入ったことを確認してからさくらとあおいが開花して立ち向かう。ネガボットはさくらとあおいが立つ場所に向けて右腕を押し付けて攻撃する。すんでのところで回避する2人、腕を押し付けた箇所には、生徒会長の名字である「目黒」の文字が〇囲みで刻まれていた。
「目黒って……確か生徒会長の名前!」
「あおい、見て! 生徒会長が!」
生徒会室の前で、目黒がぐったりして倒れている姿が2人の目に飛び込んでくる。室内では、セルペンテが目黒のカバンを物色していた。
「ない、ない、どこにしまってやがる……!」
「配達のお兄さん、何してるんですか?」
「何って、振袖のカケラを……って誰だお前!?」
避難するために生徒会室に荷物を取りに来ていたアイリスに声をかけられ、動揺するセルペンテ。
「振袖のカケラ? 探し物なら手伝いますよ」
「知らねえなら首突っ込むんじゃねえよ」
「手伝います。私は自分がやりたいことをやるってさっき決めたから」
探し物を手伝うか手伝わないかでお互いに一歩も譲らない2人。そのやり取りをしていくうちに、生徒会室にもう一つあったカバンの中から黄色い光が輝きだし、やり取りが続いていくにつれてその輝きをだんだんと強めていく。しかし、その事態を当人たちはまだ気づいてはいなかった。
ネガボットが暴れるにつれて、廃研究所の地下にある巨大な部屋に置かれた容器の中に濁った液体がたまっていく。カルネロとロンは部屋にあるモニターで作戦の様子を見つつ容器を観察していた。が……。
「ん? 不幸の蜜が……!」
ある一瞬だけ過去にはないペースで容器に溜めている不幸の蜜と呼ぶ液体が増えたことにロンが気づき、カルネロは思わぬ収穫があったことに歓喜する。
「ふむ、今の作戦で出た被害者の中に、今後使えそうな人間がいるな……。セルペンテの奴、偶然とはいえよくやってくれたよ……」
同じ事態が再び起こることに期待をしながら、不気味な笑い声を部屋中に響かせていた。
思わぬ形で物事が進むのはよくあること、裏でも何か動きが……?




