第弐拾捌幕の玖
警察が有能かどうかは作品で大きく分かれる。
千花が各地で傍若無人ぶりを発揮していた話を聞いて、ひかりが疑問を抱く。
「そんなことしてたら、警察に捕まらない?」
「顔も割れてるだろうし、気づくよね?」
投げかけられた質問にひなたは困った表情を見せる。
「それが、私たちのケースに限った話しですが警察は一度も動いてくれませんでした。相手が私の姉だったのが身内のトラブルだと判断されちゃって……」
公的機関である前に警察も人間だからピンキリではあるが、こういったトラブルをなあなあにした結果後にさらに大きな事件が発生したことは一度や二度ではないことを知った今はもう少しやりようがあったのかもしれないと後悔の念もあった。
「日本の男は本当に最低」
日本国内で姫への反発が強まっているニュースが届いていることに姫が吐き捨てるように言っていた頃、同じセリフを強い口調でひなたが突然口に出した。
ここまで話していた彼女の語り口からはまず出てこないような言葉に本人以外が驚く。人間ではないが日本の男に該当するイナリは毛を逆立させていた。
「これがこの頃の姉の口癖です」
P&Lを設立し、貧困や居場所のない少女たちを保護する活動に本腰を入れる頃にはもはや彼女の精神は悪意に蝕まれ、人間の姿をしたモンスターと化していたといっても過言ではなかった。
「私たちのユニット、Dianthus from.JPNが解散した後に大学院に進学、留学もしたけど国籍や性別に関係なくいい人はいい人、悪い人は悪い人だと私は感じました。それはどんな場所でも変わらないと思います」
「そうですよね。私の仲間にハーフの女の子がいますが見た目以外は他の女の子と何ら変わらないから個人個人が持った素質ですよね」
「それに私は解散したその日までファンのみんなが支えだった。それは有名になっても変わらなかった。他のメンバーのみんなもそうだった。一人だけは違ったけど」
「ああ……」
心当たりのあるひかりは苦笑いする。一方、一時期彼女のようになってしまっていたことを今は恥じている卯月は、初心を思い出させてくれた彼女に微笑みかけていたが、相手は不思議そうに首を傾げるだけだった。
「馬鹿な妹、でもあんな汚らわしいことから足を洗ってくれたおかげでこの国ができるまでの道が大きく進んだからそこは感謝してあげる必要があるかな」
姫は小さく笑う。
この世界でも警察は動いてはいますが振袖のカケラを持つ者には手も足も出ていないのが現状です。




