第弐拾捌幕の捌
鬼教官の地獄の指導。
「今からあんたたちの根性を叩きなおす!」
一般の信奉者を一手に引き受けたキマは、彼女たちに厳しい指導を施していた。
「整列!!」
怒号が響く。背筋が伸びた20人ほどの信奉者たちは体育の授業のごとく2列にきれいに整列する。
「あんたたち、ここで暮らしてて不便だと思ったこと、自由に挙げなさい」
突然の問いかけに戸惑ったが、口々に彼女たちは話し出す。
「夜になると電気が全然つかなくて、男がいなくてもまともに外に出歩けなかった……」
「食べ物がどんどんなくなって、最近は水すら飲むのが大変だった」
「料理を作るにしても、ガスが付かないから作れるものが限られてた」
「そもそも水道が流れなくてトイレも大変だった」
「ネットもろくにつながらなかった……」
うなずきながらキマは話を聞いていく。
「つまり、それをひっくるめて言うと?」
キマからの問いかけに信奉者たちはおずおずと答えを出す。
「インフラが、機能してない……」
「よくよく考えたらそうだ……」
女だけの国という理想郷を追い求め、それ以前に生きていくための大事な部分を見落としていたことにやっと気づいた。
「あんたたちねぇ……ここは物理的に隔絶させた土地なんだからよくよく考えなくてもそうなるでしょうが! 他にもここが不便だったってとこあるでしょ、答えなさい、あんた!」
「えーと……ゴミがそこら中に散乱してるのに、誰も片付けようとしないこととか……」
キマに指を差された信奉者が答える。
「That’s right! あんたたちは男が憎いってことしか頭になくてそれよりも大事なことがわかってないのよ。自分がやりたくないって思ってることは大体の人はやりたくないの。あんたたち最近ゴミ収集車見かけた? 見かけてないわよね? それどころか掃除してる人すらも見てないでしょ。誰かがやってくれる、ってみんなが思ってたら誰もやらないなんて小学生でもわかるわよ!!」
「はい、我がひ……」
「あんたたちは返事すら姫に対してのしか出来なくなったの?」
キマは信奉者を強くにらむ。
「こんな環境を作ったあんたたちのことだから、今までも何かしらで上手くいかないとずっと他人のせい、社会のせい、国のせいとかなんでもかんでも誰かや何かが悪いって考えてたんでしょ。それ控えめに言って人間の屑よ。もっとも、あんたたちの大好きな姫がそうにしか見えないからお似合いともいえるけど。それから、私への返事はサー、イエッサーね」
キマは強い口調で吐き捨てた。
「姫を愚弄するのか!」
一人の信奉者がキマに向かって殴りかかろうとするが、荒事などとは程遠くお世辞にも機敏に動ける姿をしてない相手など軽く避けるだけでいなすことができた。
「あんなのを理想の指導者としてついていったら人間、いや、生物として終わりよ。今日からあんたたちは世のため人のために生きなさい。まずはここから出るところからよ、いいわね!?」
「サー、イエッサー!!」
常識的に考えてこうなるよねってなった女だけの国。インフラ整備なんてするわけないよね。




