第弐拾捌幕の陸
女子大生、教祖への第一歩。
「姫、私があなたをお助けいたします!」
念願の「女だけの国」に入国し、国民となった亀井元議員と辻元県議会議員は女だけの国を満喫していた。彼女らは自らの目から見てもはや救う価値もない国としか言えなくなった日本を一刻も早く離れるために議員を辞職し、姫の懐刀となるべく本部に向かって歩いていた。
「やっと着いた……あら?」
本部の真ん前に到着したはいいが、ビルの上の方から虹色の光が漏れ出していることに気付く。
「これは……姫の神聖さを示す光! やはりこの世界が姫のものになる日が近づいている!!」
亀井と辻は折り目を正してドアを開き、ビルの中に入っていく。自動ドアをくぐると同時に、彼女がカバンの中にしまっていた会員証が光に呼応するかのように輝き始める。本人はまだ気づいていなかったがビルの中を進んでいる亀井の腕が一瞬だけ緑色に変化していた。
「あの人は、この辺りに入り浸るようになって大学にも行かなくなった」
学生の本分である学業がおろそかになる代わりに、夜の店が多い繁華街であるこの近辺で家出してる少女たちへの声掛け活動を始めるようになった。
傍から見れば善行に見えていたが、実際のところはオススメのホストクラブやこの場所だからこそできる小遣い稼ぎにいい方法を聞いて回っていただけだったと過去に彼女に保護されたが後に脱退した少女からタレコミがあったという。
「それだけならまだましだったんだけど……」
困った顔をした卯月が話を続ける。
あるライブでのことだった。卯月効果で来場者数そのものは大きく伸びたが、卯月以外のメンバーのファンの数はほぼ横ばいだった。その証拠に、再び開催した握手会では卯月が出ずっぱりだった一方他のメンバー9人は3人一組で交代制、需要がはっきり可視化できていた。
卯月のファンが大多数を占めている会場がだんだんと盛り上がっていく中、一人の女性がステージに乱入してきた。
「あなたたちはここで犇めいてる醜い男たちにこびて楽しいの!? やらされてるのよね!?」
明らかな異常事態が発生した。警備員が来る前にメンバーの中では年長者に当たる蘭と紫苑が矢面に立つとさらに顔をしかめ、自分たちは誰かにやらされているのではなく自分の意思でアイドルとして活動をしているときっぱりと否定したが千花は一切聞く耳を持たなかった。
「あなたたちのことは私が福祉につなぎます!!」
目の前にいるのが誰なのかわかっているだけに、これまでの姿からは考えられない豹変に背筋が凍る思いがしていた。
揉め始めて少し経ってから警備員が彼女を取り押さえて、Dianthus from.JPNのライブからの永久出禁が決定するも、そんなことお構いなしにある時は別の地下アイドルのライブ、またある時は各地のメイド喫茶を荒らしまわる日々を送り、いくつものメイド喫茶、地下アイドルユニットの現場、ひいてはライブハウスそのものから出禁となった彼女は悪い意味で界隈では名の知れた存在となっていった。
姫のモデルになった人物は誰とは言いませんがいます。ここまではしなかっただろうけどとは言い切れないのが怖い。




