第弐拾捌幕の陸
姉と妹、どうして差がついたのか…慢心、環境の違い
〈飯番 紅花@cuscus_tea あなたには中2の時にいじめられた。うわさを流され、私の友達にはないことない子と吹き込んで言いくるめる、大勢の前で見せしめにされる、もちろん腰巾着もいた〉
〈飯番 紅花@cuscus_tea 中2の時が初対面だったけど、初対面でなんでこんなに嫌われたのか今でもずっとわかりません〉
「でもデビューしたころはよく来てくれてたよね?」
「うん……」
事実、デビューライブは自分たちメンバーの人数よりも少ない数しか観客がいなかったことが強烈に記憶にあるが、その中の一人が千花だったことは妹であるひなたはもちろん卯月も覚えていた。
スターダムにのし上がるのは一朝一夕でできる事ではない。地道に活動を続けていたが結果にはなかなかつながらなかった。
千花自身もアイドルデビューこそかなわなかったが、自分が注目される場所と、そのついでに妹を応援するための資金を求めてコンカフェなどで働くも店内での人気は下から数えた方が早かった。
「なんでこんなこと思い出すんだろ」
思い出したくない記憶が次々とよぎってくる。彼女の部屋にある三日月の形をした結晶体がうっすらと光りだしていたが、持ち主であるはずの彼女はまだそれには気づいていなかった。
他のグループとの差別化で握手会やチェキなど一切なしのストロングスタイルを試してみたこともあった。しかし、結果としてはあったときよりも売り上げが8割減という大爆死になったこともあった。
「そんなこともあったなぁ」
「でも、あの頃は楽しかった」
いつメンのファン以外はなかなか定着せず、配信も視聴者数は伸びずからっきし、グッズは結成時に作ったものが年単位で売れ残ってるのがデフォルト、ショッピングモールなどに行ってライブをやっても足を止めてくれる人は数えるほど、移動はワゴンにぎゅうぎゅうになりながら、いい思い出ばかりだったとは到底言えないが、彼女たちにとってのかけがえのない青春だったことはさくらもひかりも感じ取っていた。
「そして……あの日がやってきた」
卯月が語りだす。とある大型複合商業施設の野外ステージでライブを行うことになった際、当時はまだ無名でメンバーとしての売り上げも芳しくなかった彼女は「端っこでいいからステージに出してほしい」と直談判した結果「奇跡の一枚」と言われる写真が撮影された日。
この日を境に卯月見たさに来場者が急増、気を良くした運営は彼女をプッシュしていくこととなった。だが、長いこと欠かさずライブに来ていた来場者の一人が姿を現さなくなった。
「それって……」
「姉のことです」
「行かなくなった後、どうなったの?」
「それは……」
ひなたは一瞬口ごもるが、呼吸を整えてから再び話し始める。
売れなくても、脚光を浴びなくても、青春だった。ブレイクできなかったユニットの面々にはこう思っていてほしい。




