第弐拾漆幕の拾弐
この人が女だけの国に来たのには意味がある。
「何……? なんか気持ち悪い気配がする……」
当の本人は背筋に寒気を覚えながら歩みを進めていた。あと少しで本部に到着するところまで来ていたが、その分警備も厳重になってきていた。
「あなた、ブレスレットは?」
一人のフィーユソルダが自分たちと同じ姿をしていながら手首にブレスレットがない彼女たちを不審がって声をかける。
「えーと、その……」
「じゃあそこのキツネは?」
「え?」
かりんの服の中に隠れているはずのイナリのことを指摘され、さくらはきょとんとする。彼女の方に顔を向けても、服の中にいた。
「いたぞ!」
「お前たちがキツネを連れていることはもう情報が入っている!」
ブラフを仕掛けてきたフィーユソルダに二人は黒装束を引っぺがされる。直後、物陰から仲間が出てきてさくらとかりんは全方位を囲まれてしまう。あと一歩のところなのに、もどかしさを背負いながら対応しつつ少しずつ歩を進めていると……!
「付和雷導!」
「一目了然!」
電撃がさくらとかりんを囲んでいる彼女たちのブレスレットを連続で貫いていく。ワンテンポ遅れて電撃が再び飛んできて、ショートしたブレスレットを1つ残らず落下させていった。
「ティーガー!」
電撃を放った主はさくらの声に柔和な笑みを浮かべていた。その隣では呆れ顔のキマが立っていた。
「……男!」
「あら失礼ね、私は男でも女でもないの」
あっけらかんとキマが反論する。
「ならなぜ私たちの邪魔をする!」
「むしろ味方すべきじゃないのか!」
ブレスレットを破壊されても姫への忠誠を誓い続けている信奉者が口々に反論し始めるが、キマは意に介さず答える。
「どっちの視点から見てもあんたたちのやってることがただの自己中にしか見えないからよ。見てみなさい、あのゴミの山」
彼女たちが足元を見渡すと、ところどころにゴミが転がっていた。
「今のここはあんたたちそのもの。都合の悪いことは見ないふりをして馴れ合い、自分がうまくいってないことを人や社会のせいにして安全圏から自分を正当化しながら攻撃する、醜いったらありゃしないわ」
信奉者は図星を突かれて歯ぎしりをする。
「そもそもここ、インフラが機能してないよね」
「食料がなくなるのも時間の問題じゃない?」
「誰かがやらなきゃならないんだから押し付け合いになる未来しか見えない……」
さくらたちは清掃を放棄していた信奉者や水を求めて倒れていた夜職の男の姿を目の当たりにしていただけに、ここが近い未来に直面することが火を見るよりも明らかないくつもの問題を指摘する。
「あんたたちのひん曲がった根性は一人残らず私が叩き直してあげる、ティーガー、あんたは振袖小町と一緒に本部まで行って姫を引きずり出してきなさい!」
「言われなくとも!」
戦意が喪失した信奉者の山をかき分けたさくらとかりん、そしてイナリは、本部へ向かうラストスパートをティーガーとともに駆けていった。
一般信奉者ボッコボコタイムでした。残るは本丸。




