第弐拾漆幕の拾
突然のコンタクト。
さくらとかりん、そしてイナリはあおいたちとは逆方向の裏路地で息を潜めていた。こちらの道の方がフィーユソルダが多く配置されており、先ほどまでのあおいたちに輪をかけて表に出られる状況ではなかった。
「どうしよう、このままじゃ合流できない……」
「あおいたちがいるだいたいの場所は感知できてるけど、近づけないんじゃ意味ないなぁ……」
「卯月ちゃんがP&Lに囚われたっていうのにね……」
「そうそう、大変だよね……って、えっ!?」
話に自然に入り込んで青天の霹靂を放ってきたのは、ひなただった。
「う、卯月ちゃんが囚われてるってどういうこと!?」
思わず声が大きくなるかりんの声をさくらがなだめる。フィーユソルダの視線が一斉にこちらに向かう。
彼女たちが裏通りに近づく前に、ひなたが表通りに行き説明を開始する。
「何があったんですか?」
「突然ネズミが出てきて驚いただけ、だから大丈夫」
「わかりました」
ひなたが場を収めてフィーユソルダはそれぞれの持ち場に戻っていき、振袖小町が隠れていることは気づかれず事なきを得た。
「はっくしょん!」
「おいおい、風邪か?」
「塾に行けなくなるから移されちゃ困るんだがな」
石神達3人を先導していたチュイが大きなくしゃみをする。彼らは指令に基づき目的地へと歩みを進めていた。
「でもなんでそんな重要なことを教えてくれるの?」
「まさか騙すつもりじゃ……」
信用ならない相手が重要機密を口にしている、怪しさの塊としか言えないシチュエーションである。
「卯月が姫に囚われてることは本当だし、私はあなたたちをだますつもりはない。なぜなら……」
話はラパンとひなたがP&L本部に向かい、姫に対面したところまでさかのぼる。
「因幡卯月!? なぜここに!!」
「お姫様ごっこを止めに来た」
自らの理想郷を創るための崇高な活動を「お姫様ごっこ」と切り捨てられ、姫は顔をひん曲げる。
「こいつを監禁しなさい!」
「はい、我が姫」
ひなたは卯月の両手を縛り、監禁室へと連れて行った。だがこれは彼女の想定通りだった。
「ここが監禁室……嫌な感じ」
ひなたは何も言わず進む。
「食事を持ってきたよ」
「……これって……!!」
着いた先には、両手足を拘束され、荒い息を吐きながらFFVを装着した皐月と蘭がいた。
「卯月ならこの二人、どうしたい?」
「それはもちろん……!」
言葉を続けようとした卯月をひなたが止める。監禁する場所であるがゆえに監視カメラも完備、下手な言葉は自らの首を絞めかねなかった。
ひなたはパックのゼリー飲料を開けて二人の口にくわえさせる。息も絶え絶えの二人が少しずつ飲み進めるのを見つつ、卯月の両手両足に拘束具を付ける。
「少しの辛抱だから」
「それで済めばいいけど」
「助けてくれる人が来るかもね。例えば、振袖小町とか」
盤上がどうなっているのかを把握しているかのような言葉に彼女の頭のキレは健在、何がしたいのかを理解していた。
さくらとかりんは自分も本部に連れていくよう頼むがそれは拒否される。
「この土地の中心地で待ってるから」
それだけ言い残してひなたは去って行った。ここまでの道のりを振り返るとだんだんと本部のあるビルが近くなっている、さくらたちはここまでと同じ道を再び歩み始めた。
後ろめたさのある子が大きく動き始める、激動の予感。




