第弐拾陸幕の玖
どこかで見たことある人、まだいます。
屋上にたどり着いたかりんは、人や建物の影に潜み、背後を狙うと同時に人の姿になって手に持ったウォーターガンのような銃から墨のようなものを発射してはイカのよう形に変身して別の影へと飛び移る謎の生物を目撃する。全身真っ黒になってしまったコスプレイヤーにご愁傷様と心の中で思いながら彼女はそれを追っていき、撮影に集中しているカメラマンを背後の影から銃口が出てきた瞬間を見逃さず、矢を放つとウォーターガンが破壊されて射撃を未遂に防ぐ。
「カメラマンさんは私たちレイヤーにとってありがたい存在! それにレイヤーのみんなが作った衣装やメイクを墨でめちゃくちゃにするなんて、たとえ準備会が許しても、この振袖小町が許しません!!」
昔ながらの由緒正しい決め台詞がしっかり決まったと悦に入るかりんだったが相手には日本語自体が通用しないようでステゴロで襲い掛かってきた。
少し前に影に潜り込む相手とは戦ったばかり、その恐ろしさは身をもって知っていた。逃げるにもまだ人が多く遠くへは移動できない、武器を持っている時よりも厄介になったと思った、その時だった。
彼女の頭上が大きな影で覆われ、上空にヘリコプターが到着していることに気づく。そしてヘリの扉が開かれて中から飛び降りる一つの影と、イカ型生物に向けて放たれた一条の閃光を目撃した。
「たーっ!」
「うわあああああ!」
閃光は狙いを貫き、見事なスカイダイビングでひかりが合流、イナリも彼女の肩に捕まっていたがこちらは目を回してしまっていた。
「ひかり! ……イナリ、大丈夫?」
「い、一応……」
屋上に現れた脅威の無力化には成功したが、それはドロドロとした黒い物体に変化してベラドンナの象徴ともいえる大きな三角形の建物に向かって飛んでいき自ら吸収されていった。
「今のは……?」
根本的に倒せていなかったことを悔やむひかりと嫌な予感を覚えたかりんは急いでエントランスに向かった。
ホールでは2組の双子がにらみ合っていた。メイドの方は明らかに特殊な戦闘能力を持たないことが目に見えてわかる蓮に向かって挟み撃ちを仕掛けてきた。
普段ならあおいがどちらかを狙って未然に防げるが、本調子ではない彼女は動きがいつもより遅れてしまい、このままでは直撃を食らってしまう。その時、これまでにない現象が起こった。
さくらとアイリスは庭園の高所にいる敵が遠距離から飛ばしてくる矢とパンチを防御していた。さくらが放つ炎では射程が届かない、接近戦への持ち込み方法を迎え撃ちながら思案していた。
「私の豪拳・山吹をロケットパンチにすれば当てられると思うけど、1回しかできないからなぁ……」
対策はあるにはあるがイチかバチかの賭けになってしまう。確実な突破法はないものか、と引き続き考え続けるアイリスだが……。
「ロケットパンチ……?」
さくらが彼女の言葉にヒントをつかんだところに、麦わら帽子の青年のパンチがアイリスに向かって飛んでくる。さくらはある突破法をひらめき、今まさに狙われている彼女に伝えた。
パンチが遠距離で当たる、空にそびえるくろがねの城って画期的だったんだなぁ。




