第弐拾陸幕の捌
さあ、どっかで見たことある敵の登場です。
「準備できた?」
「いいよー」
まずはさくらの周りにかりん、蓮、かんなが手をつなぎあい輪になって、互いに背を向けあう形で立つ。内側から赤い光が漏れ出し、振袖小町となったさくらが出てくるとあおいと交代する。光の色以外は同じサイクルを3回繰り返すと人間のロッカールームは解体し、追う準備ができた。
距離のある場所へと向かう場合普段であれば高所を飛び移って伝いながら目的地に向かうが、今は激しい人口密度の中にいるうえに走るのが御法度の状況、流れに身を任せるしかないことにさくらたちはもどかしさを感じながら敵の影を追った。それでもかりんは慣れっこと言わんばかりにすいすいと進んでいたが。さくらとアイリスは追いかけるのに手こずっていた。二人は普段の自由に歩くことのできる環境にありがたさを感じることはこの場所に来なければ知りえなかったことを悟っていた。
ホールに到着したあおいと蓮は、撮影に励んでいるコスプレイヤーとカメラマンがにわかに騒がしくなっているエリアを発見する。そこには水色とピンクの色違いの髪を持つ双子のメイドを中心に円形の囲みができていた。本来ならばグラビアにも進出して雑誌の表紙を飾るレベルの超有名コスプレイヤーを一斉に撮影する時の布陣だが、囲んでいるのがカメラマンだけではなかったことと中心にいる双子メイドが物々しい雰囲気を出していたことは明らかに異質だった。
「これどうなってるんですか?」
蓮が近くにいたカメラマンに尋ねると、会話が通じず近づこうとすると威嚇されてしまうためどうすればいいのか困っているという。
「私が行く……」
少しよろけながらもあおいが二人に近づいていく。心配になった蓮も後を追う。
庭園に向かうための階段まで案内してくれたかりんと別れ、さくらとアイリスは降りて庭園に到着。直後に、さくらの足元に矢が飛んでくる。その方向を見渡すと、高所に弓矢を持った魔法少女が立っていた。
彼女に近づきつつ攻撃を警戒する二人は、どこからともなく飛んできたパンチが避難しようとしているコスプレイヤーに向かってきているのを目撃、さくらが剣で対応しようとするとパンチが戻っていく。
「逃げてください!」
指示に従い逃げるコスプレイヤーとカメラマンを見送り、パンチの主が何者か確認すると、こちらも同じく高所に立っていた。その姿は麦わら帽子に赤いシャツを着た青年のようで、パンチを放った腕が縮んで戻っていったことからこの距離から当てられるのも納得だった。
生憎こちらは遠距離は不得手、さくらが攻めてアイリスが守る役割分担では迎え撃つのが精いっぱい。接近戦に持ち込むためにはどうするかを飛んでくる矢を跳ね返し、拳を土の壁で遮りながら作戦を練り始めた。
ありったけの夢をかき集め、目覚めた心は走り出しました。描いていた望む未来へ。




