第弐拾陸幕の伍
疑問はいつでもふと降りかかる。
全国各地に散らばった振袖のカケラ争奪戦はカルネロ側の3勝2敗、3つと2つで分け合う形となった。だがカルネロは不満げな表情を浮かべていた。
「過半数はとれたんだからいいんじゃない?」
これで全国を周らずに済むチュイは妥協を促すが、彼は首を横に振る。
「議席ではないからそれでは意味がない。どういうことか分かるか?」
「それって……」
同じ趣旨の会話は、ロンたちが根城としている雑居ビルでも行われていた。ロンはスキロスとティーガーの戦利品を並べて話を続けた。
「これらの振袖のカケラは、5つ揃ったときに初めて意味を持つ。単体で持っていても他の振袖のカケラと同じだ」
「つまり体、両手、両足のカード5枚が全部手元にあれば勝ちのモンスターと同じってことか」
「なら厳重に保管しないといけないわね」
「しかしあいつらは何をしてくるかわからない、戦って分かったが明らかに前よりも強くなっていた」
「それももちろんですが、振袖小町に知られるのもこちらにとって不利益になりますね……」
「つまり、我々にとって今後のカギとなる存在だということをくれぐれも忘れないでもらいたい」
両陣営ともに共通認識を作り、管理体制を話し合った。
さくらはヘロヘロになったあおいを見つけて肩を貸しながらサークルへ向かい、蓮とも合流する。ちょうど前に到着した時、二人組のコスプレイヤーと鉢合わせする。彼女たちは「アイライブ!」に登場する大和撫子系幼馴染である八王子かがりと、ツンデレピアニストの日比谷珠姫のコスプレをしていた。
「さくらちゃん! あおいちゃん! 蓮くん!」
コスプレイヤーの一人に名前を呼ばれるが、知り合いでコスプレをするのはかりんだけ。しかし彼女は今サークルで売り子をしているうえに、背丈も彼女より高くナイスバディだった。いったい誰なのかわからずさくらはうろたえてしまう。普段の冴えた頭の回転が失われてしまっているあおいも何者か判別できず蓮も目を瞬かせるばかりだった。
「あの……どなたですか……?」
コスプレイヤーはショックを受けて固まってしまう。
「よくあることだよ。がっかりしないで、アイリス、かんな」
月の戦士やシリーズの初期を除いて毎年代替わりしているバトルヒロインの初代の二人組のように、変身前後で顔や髪型は全く変わらないのになぜ誰も同一人物だと気づかないのかとツッコミを入れたくなるシチュエーションはフィクションでよくあるが、意外とわからないものだったりするとかりんが納得した表情で話し出す。いつもと違う二人にさくらは仰天、蓮は声を聞けばわかるが髪型やメイクももちろんだが服やフィールドで別人に見えるマジックが起こっていると感じていた。
コスプレイヤーが過去に会ったことのある人物だと後でわかるのはよくあること。




