第弐拾陸幕の肆
グレーゾーン!
蓮も地図を頼りに人の波に流されないよう気を付けながら進んでいた。
「確かこのあたりだと思うんだけど……!?」
目に入ったポスターに描かれていたのはどこからどう見ても現代の振袖小町、顔こそサークルごとにまちまちだったが衣装は目撃情報や活躍の映像などから分析されており実物と遜色ないものだった。
「(振袖小町ってこういう方面でも人気だったのか……)」
意外な新発見ができたところで、サークルに描かれた番号を見て目的地が近いことに気づく。進行方向が合ってることを確認し、人の流れを読みながら進んでいった。
退会の旨を綴ったメールを出してそれぞれ福岡と大阪に戻った春日親子と住吉親子は、親子そろって無事に帰宅できたことに胸をなでおろしていた。だがそれも束の間、P&Lの悪行をSNSに書いて送信しようとした瞬間スマホがショートして起動できなくなってしまっていた。
幸い少女たちに怪我はなかったが、人の口に戸は立てられぬのなら送信する機器を物理的に破壊すればいいというのが姫のやり方なのかと思うと父親はもちろん、これまで姫こそが世界を正しく導いてくれる唯一絶対の人物だと崇めていた二人の少女も黙ってはいられなかった。
さくらにかつての役名で呼ばれた彼の名は大門透哉。公私ともに親しいトマトレッド役の赤羽蕃が放送終了後大ブレイクを果たし今では国民的タレントになったようにはいかず俳優としてはバレーショ男爵に続く当たり役には恵まれなかったものの整った顔立ちと均整の取れた体型を活かしてモデル業にも進出しはじめ、地道に活動を続けていった結果朝のニュース番組のレポーターに抜擢、以前とは違った形での人気を獲得していた。
彼にとってバレーショ男爵は若き日のよき思い出だったが、その名前でこの地で呼ばれたことの驚きの方が今は大きかった。さくらはもちろん目の前にいるのは大門透哉であることは理解していると説明しながら当時ファンだったと伝えると、手を差し伸べて握手をする。当時の自分に後の自分がバレーショ男爵と握手ができたことを伝えたら飛び上がって喜ぶだろうと思い、彼の手の大きさを感じていた。
「いやー懐かしいね、何年前だっけ?」
「えーと、10年前です」
「そこまで出るか!」
幼少期に応援してくれたファンの記憶力にびっくりする大門。
「ありがとうございました! 本物に会えてびっくりしました!」
さくらは礼をしてから目的地へと足を進める。彼女の背中を見て彼はかつての自分が役を全うしたことは間違いじゃなかったと改めて感じ、本来の目的の相手がいる場所に張り切って向かって行った。
作品の題材が作品内でナマモノとして同人誌が出るのってよくありますけど、あれの元祖って何なんでしょうね?




