第弐拾陸幕の弐
初心者には始まる前から波乱、それが世界最大の即売会。
コミシェ当日、二日間ある日程のうちの初日。初参加のさくらたちはサークルの売り子を頼まれているかりんとは別行動だったがあらかじめ彼女から会場である「東京ベラドンナ」への行き方を教えてもらっていたため、最寄り駅までの道のりは迷わず到着できた。
アイリスとかんなはかりんが作った衣装が入ったキャリーケースを手に更衣室へと向かう。さくら、あおい、蓮は駅の目の前に立っているスタッフに待機列がどこにあるのか尋ね、指示に従って進んでいく。
「話には聞いていたし……」
「ニュースとかでも見たことあるけど……」
「入る時点でもうすごい人の数だな……」
まだ行列に並んだだけだが人の多さに圧倒されていた。しかしそれだけではなく、先日の海に勝るとも劣らない酷暑が襲い掛かっていた。帽子をかぶり、日傘をさしてハンディファンを回していたがそれでも気休め程度だった。
一方ひかりはそんなことなどお構いなしにぐっすり眠っていた。コミシェに行く計画は彼女がまだオリエント・ゾディアックにいた頃に開始していたため彼女が仲間になったころにはもうチケットは当日券しかなく、自由に使えるお金も持っていない彼女は一緒に行くことは断念せざるを得なかった。人間ではないから入場できないイナリもまた留守番させられることに不満を抱えており揃って不貞寝していた。
更衣室。街中で普通に歩いているような女性が衣装やメイクで様変わりしていく姿にアイリスは仰天していた。
「メイクは魔法だからね! キャラに合ったメイクをりんりんに教えてもらったから、そっちは任せて!」
「う、うん……」
どこか自信なさげなアイリスにかんなは小さく耳打ちする。彼女の理論に目から鱗だった彼女はやっと踏ん切りがつき服を脱ぎ始めた。
なんとか会場内に入ることができたさくらたちは外で並んでいたのとは比べ物にならない人の多さに圧倒されながらもかりんが待つサークルへと向かっていた。なんとかホールにたどり着いたが人の波にさらわれ3人はそれぞれバラバラに流されてしまった。
「500円でーす! ありがとうございまーす!」
コスプレをしたかりんは売り子として接客していた。本のクオリティはもちろん、それなりに名の知れたコスプレイヤーである彼女が売り子をしている効果もあって売れ行きは上々だった。
隣のサークルである「新時代のジャンヌ」の主であるミスティは出席こそしていたが、到着した際に挨拶及び新刊の交換をしたがどこかつれない態度だった。それ以後の彼女は、帽子を深くかぶって一心不乱にスケッチブックに絵を描いていた。彼女のサークルに来た参加者もいたが、対応は最小限に済ませて去っていくと再び絵を描くを繰り返して周りを全く寄せ付けないオーラを放っていた。
「(あんなに集中して、一体何描いてるんだろう……? それにこの人、どこかで見たことある気がする……)」
彼女の挙動に引っ掛かりを覚えつつも、かりんは接客を続けていた。
スタートしたけど何が起こるやら……。




