第参幕の弐
活動するための拠点を作る、フィクションの高校生だと一番作りやすい形がこれですよね。
「あれ何? 大きなハンガーみたいだけど」
蓮の質問に、着物をかけるために使う家具だと鼻高々でさくらは答える。しかしこの汚れ具合では、まずは掃除が先だと思っていた。その矢先だった。
イナリの額の石が光り、それと同時に衣桁にかぶっていた埃が一気に宙を舞い上がる。大量の埃が舞い上がった勢いに思わず目を閉じて咳きこんでしまう一行だったが、目を開けると目の前にあった衣桁が新品同様といえるほどに見違えるような輝きを放っていた。衣桁がイナリの目に入った途端、自分の額に何者かが振袖のカケラを当て、衣桁に振袖のカケラが集まっていく様子が頭に浮かんだ。
「……そういうことか! さくら、あおい! ボクの額の石に振袖のカケラを当ててみてくれるかい?」
言われるがままに、各々が持っている振袖のカケラをイナリの額の石に当てる。すると、振袖のカケラが結晶状から布のような薄さに変化して、衣桁へと瞬間移動してくっついたのである。文字通り猫の額としか言いようがないほどの小さな布切れ状だったにもかかわらず、物理法則を無視したそれは糊で接着しているわけでもないのにどんなに力を入れて取ろうとしても衣桁から外れなかった。
「びっくりしただろう? これはもともとの振袖小町が纏っていた衣をかけていた衣桁だからね。もっとも、イナリ君を通せばわざわざここに来ることもなく保管できるようになっていたのは私も知らなかったが……」
「ボクもたった今脳裏に光景が浮かんだから何とも言えないけど、便利なことに違いはないね」
さすがは未知の技術で改造されたキツネとしか言いようがない。まだまだ隠された謎がありそうである。
だが、地下室が見過ごせないほどに汚れていることは事実、また来る可能性は十分に考えられる。いったん地上へ出て掃除用具を取りに行き、協力して部屋を掃除して日曜日は終わっていった。
また新しい一週間がやってきた。今までのように朝起きて、さくらたちは高校へと出発する。この週末でただ一つ変化があったことを除き、さくらもあおいもごく普通の女子高生なのである。世間的には火宮家で飼われているペットという扱いになるイナリは、振袖のカケラが見つかった場合はさくらたちのもとに駆けつけるが、それ以外は不本意ながらも留守番をすることに同意して登校を見送った。
同じ頃、さくらたちとは少し離れた町に住む、彼女たちと同じ制服を着た1人の少女が自宅を出発して彼女たちと同じように登校しようとしていた。彼女が持ったカバンの内ポケットの中には、ネガボットが公園で暴れる事件が起こる直前に商店街で八百屋の店主からもらった宝石のような結晶がお守りとして入れられていた。
通学路で、さくらはある提案をする。
「昨日帰ってから思ったんだけど、私たちが学校内で集まる場所として部活を作ろうかなって思うんだけど、どうかな? 名付けて……小町部!!」
あおいも蓮もその意見には賛成、授業が終わり次第生徒会室へ行くことになった、が、部活の創設に際しての内容を確認するために生徒手帳を開いて読んでいたあおいがある記載に気づきさくらにそれを伝えようとするが、部活作りに夢中な彼女の耳には全く入っていなかった。
振袖のカケラを固定するための衣桁、マーチャンダイジングを展開していた場合コレクションアイテムの箱に該当しますね。作中世界だとこれがないとかさばって大変だろうなぁ……。




