第弐拾伍幕の拾陸
ありえた世界線を夢で。
「あれ? ここは……?」
「服が戻ってる! ……なんでサイリウム!?」
気が付くと、振袖小町は変身が解け、眠らされた人々とともに両手にサイリウムを持って座席に座っていた。
「みんなー! 今日は私たちのライブに来てくれてありがとー!!」
そしてこの場の主役であるDianthus from.JPNのメンバー10人が現れ、一人ひとりの自己紹介が進んでいく。MCが終わった後に何度も歌い慣れた曲の伴奏がかかっていき、どんどん会場のボルテージは上がっていく。
「私たちはジャンヌ・ダルク」
「道は自分で切り拓く」
「乙女たちよ」
「いざ進め新たな時代へ」
10色のサイリウムの大きな海の中心にいるのは卯月だけではなく自分たち全員、曲を歌いながら数えきれないほどの歓声を浴びる。道半ばで夢破れた現実を受け入れていたひまり、紫苑、杏夏は、どんなに手を伸ばしても届かなかった光景に夢だとわかっていても嬉しくてたまらなかった。
「次はこの曲!」
2曲目が始まろうとしていたその時だった。
「はい、楽しい時間はもう終わり」
紫苑の耳についていたインカムに衝撃が走り、夢の世界は一瞬にして砕け散った。同時にさくらたちの姿も振袖小町に戻り、敵襲から解放されたアイリスもここで合流した。
「かぐや……!」
到着したかぐやとフィーユソルダの攻撃で紫苑のヘッドギアが損傷し、スパークしていた。彼女の能力で形成されていた夢の世界もガラスが割れるように外観が砕けて消滅、囚われていた人々たちは物々しい雰囲気に恐れをなして一人残らず逃げていった。
「振袖小町、今はあんたたちと戦う気はない。姫がもたらす以外の幸せに溺れるような奴はいらない」
かぐやが満身創痍で座り込んでいる紫苑にとどめを刺そうとしたところ、さくらとひかりが割って入る。あおい、アイリス、かりんはフィーユソルダの足止めをしていた。
「何すんの!? こいつはあんたたちにとって敵、いなくなるほうが得じゃない!」
「損とか得とかじゃない!」
さくらの言葉にかぐやは彼女をにらむ。
「紫苑さんも杏夏さんも、夢だとわかっててもとっても楽しそうだった!」
「そしてその中にはあなたもいた! なのにどうして平気で壊せるの?」
「そもそもだけど、姫がもたらす幸せって本当に自分にとって幸せなのかな? ボクは違うと思う」
ひかりとさくら、そしてイナリの言葉に攻撃の手が緩む。その隙を見逃さず、気配を消した杏夏がかぐやを引きはがした。
「あんた、裏切る気!?」
かぐやから手を離した杏夏は何も言わず紫苑に肩を貸し、二人は振袖小町に向き合って空いている手を広げて無抵抗の意思表示をする。かぐやは不満しかなかったが、フィーユソルダももう撃退されており自分たちができることはもうないとひまりに説得され、しぶしぶ撤退した。
他のメンバーと対照的にかぐやのドライ具合が目立つ。絶対何かあったな。




