第弐拾伍幕の拾参
名古屋と夢の世界、二元中継です。
名古屋城の石垣を上る石神。木登りというよりもロッククライミングに近かったが着実に登っていく。しかし指先にはそれなりの負担がかかっていた。
「(このまま垂直に昇れれば楽なんだがな……。空が飛べれば楽勝なのに……)」
そう思った瞬間、彼の脚元に乗っても落ちない雲の足場が形成された。
「これは……!」
足場は彼が思ったように移動する乗り物だった。そのまま雲に乗り、昇っている時とは比べ物にならないスピードで垂直に飛んでいった。窓ガラスからその光景を見たセルペンテは仰天し、白旗を上げざるを得なかった。
「カルネロ、これって一体……!?」
中継映像を見ていたチュイは突然の展開に驚く。カルネロはにやりと笑い返答した。
「ここまでの彼らの装備を思い返してみるといい」
チュイは片桐と麻生、そしてK2や北沢の装備していた鎧がどんな見た目をしていたかを振り返り、ある共通点を見出す。
「……そうか! そういうことか!」
合点がいって納得したチュイだったが、一つ疑問を呈する。
「じゃあさっき小菅に渡した鎧は何なの? 竜なんて出てきた?」
「それは彼が鎧に秘めた能力を使ったときにわかるさ」
そう言ってカルネロは研究室として戻っていった。彼の言葉に竜が何を表すのか、チュイとボヴィーニは答えを探し始めた。
彼の研究室では現在、最後の1つとなる鎧の完成を急いでいた。
「これの実戦投入には……やはり邪魔になるのはこいつか」
心底腹立たしい表情で見つめていたモニターには、P&Lの公式サイトのトップページに載っていた代表者の顔写真が映っていた。
だんだんとサマーキッズの客足が伸びてきた。悪臭と暑さに抗いながら蓮とかんなは店を回し、振袖小町の帰還を待ち続けた。一方蓮は悪臭が漂う中、カレーの大鍋が目に入る。
「……使えるかも! でも……」
食品ロスを防ぐ天啓が降ってきた。ひとつ問題点が浮かんだが、他に方法は思い当たらず食材を調達に急いだ。
さくらたちは引き続き恐ろしい悪夢と仮初の幸せな夢から覚ますために奮闘するも、悪夢から覚ますべき人々はだんだんと少なくなったが幸せな夢から自ら離れようとする者など皆無だったため全体的な救出が追いついていなかった。意外にもイナリが足に噛みついて痛みで起こす方法が効果を発揮していたが、それでも焼け石に水だった。
もちろんナフ・ヴァルキリーもただ見ているだけではなかった。
「一切怪空!」
杏夏が気配と存在感を消し、紫苑とひなたと共に振袖小町の妨害を始めた。
念願のプロ野球選手になれたにもかかわらずプロの厚い壁に跳ね返されて絶望している誠治、高井、久我はあおいとさくらとかりんの手によって解放されたが、直後に杏夏とひなたに捕まってしまっていた。
「酔生夢視!」
軟式野球部の3人は再び悪夢に囚われてしまった。どんなに食べてもなくならず、一切太らずにスイーツを堪能している夢を見ていた久美は彼らが苦しんでいる姿を見て居ても立っても居られず食べていたパフェを放り投げて彼らのもとに駆け付けていった。パフェは地面に落下する瞬間に跡形もなく消えてなくなった。
走ってきた彼女は杏夏がいたことに気づかず突き飛ばしてしまい、体勢を崩した彼女はとっさに紫苑の腕をつかむ。
「あなたもこっちに来るの!?」
「一緒に幸せになりましょう!」
紫苑と杏夏は幸せな夢を見ていた女性たちに取り囲まれてしまい二人もそのまま眠りに落ち、夢を見始める。ひなたは自らその後を追い、夢を見る。
彼女たちが見る夢は次回わかります。見る人によってはかなり切ないかも。




