第弐拾伍幕の拾壱
抜き打ちは誰にもいい結果をもたらさない。
「さて、あの子たちの様子はどうかしら」
浜辺のすぐ近くにある道路にいかにも成金趣味な高級車が路上駐車し、この地区から国会議員にまで上り詰めた政治家でP&Lの支援者の一人である亀井香菜子が降りてくる。彼女はその足で浜辺へと進み、名目上の責任者として名義貸しをしているシュガームーンから長く伸びている行列に満足な表情を浮かべながら近づいていく。しかし、彼女が通り過ぎた後でも分かる香水の匂いに、モーゼが海を割ったかのように砂浜にいた人々は彼女を中心に両側に割れていった。シュガームーンの列に匂いが飛んでいくと、列はどんどん短くなり人々は蜘蛛の子を散らすように去って行った。彼女はなぜこうなったのか全く気付かないどころか自分が原因であるなど一切思わず、そのまま店内に入っていった。
「ん……? なんだ……? うわっ!」
風通しのいい作りになっているサマーキッズの店内にも彼女の香水の匂いは飛んでいき、注文された料理を作っていた蓮と客に料理やジュースを運んでいたかんなは顔を引きつらせる。だが客も同じ匂いを嗅いでしまっていると考え二人は営業スマイルで乗り切る。
客足が絶たれたシュガームーンでは、姫に保護された少女たちが働いていた。
「いらっしゃいませ」
同じ姫を崇拝している身でありながら自分が誰だかわかっていないことに若者の政治離れを実感しつつも癪に触っていた。
「今いるのはあなたたちだけ?」
「そうですが」
「……なんですって?」
亀井はみるみる顔が真っ赤になり、対応していた少女に支離滅裂なクレームをぶつけてくる。どうすればいいのかわからず彼女は何も言い返せず、自らがいる環境への不満が芽生えてきた。
アイリスはあおいからの指示で外の見回りをしていた。相手が現実世界に戻ってくる可能性がないとは言えないためその場合の迎え撃ち要員に指名されたのである。もっとも、本人の前で彼女の作ったカレーを劇物扱いするのは不適切なのが真の理由だが。いつ敵が現れるかはわからないため振袖小町になってから歩いていた。
「みんな大丈夫かな……」
「見つけたぞ!! 振袖小町!!」
さくらたちが夢の世界に向かうことができたかどうかも不安な中、アイリスの姿を見るや否や強い口調で名前を呼ぶ声が聞こえてきた。
声の聞こえた方に振り返ると、竜を模した鎧を身に纏った人物がおり、彼はそのままアイリスに襲いかかってきた。
「誰!?」
答える間もなく、彼はアイリスの右脚にキックを浴びせてきた。
スメハラは基本的に本人は無自覚だからこそたちが悪い。




