第弐拾伍幕の拾
エージェントじゃない振袖小町、夢の世界にはどう向かう?
夢の世界にたくさんの人々が囚われている。だが振袖小町には自発的にそこに行ける方法がない。入り口に準備中の札を出してからサマーキッズに戻り、作戦会議をしている小町部は頭を抱えていた。
「一体どうすりゃいいんだ……」
「夢の中に入るのはうちで研究したことはあったけど……」
「現代の技術では不可能という結論に至り、中止になっております。思えば、この研究の主任も本橋ひなたでした」
金丸ファウンデーションをもってしてもお手上げの状態、それだけ振袖のカケラがオーパーツ的な存在であることを実感させられていた。これでは多くの人々を救うことができない……そんな中、ひかりが一石を投じる意見を述べた。
「じゃあさ、ボクたちも今から寝ればいいんじゃない?」
灯台下暗し、簡単なことを見落としていたと気づかされた。
「でもどうやって寝るの? 今昼だよ?」
かりんの不安な声に、眠るにしてもこんな明るい時間からでは退屈な授業中でもなければなかなか厳しいものがあった。
いい方法がないかと知恵を絞り合う中、あおいの視線に冷蔵庫が入る。その中にはアイリスが作り上げてしまったカレーを模した恐るべき食べ物らしきものの鍋が入っていた。
名古屋城。天守閣の前でセルペンテと鎧を装備した石神が上を見上げていた。視線の先には金の鯱、その鱗の一つが今回争奪の対象となっている振袖のカケラとなっているという。しかし、両者ともに空を飛ぶ方法を持ち合わせていなかった。
「それならこうすりゃいいだけだ!」
石神は石垣に手をかけ、上り始めた。
「小さいころから木登りは大得意なんだよ! うおおー!!」
この直情的行動にはあまりの見た目と中身の一致度の高さをうかがわせセルペンテは度肝を抜かれる。
「猿っぽい見た目の鎧だと思ってたが、中身まで猿じゃねえか……まさか!!」
大阪と広島で繰り広げられた戦いで少年たちが鎧を装備して戦っていた情報が彼の耳にも入っていた。ここから推察される彼の能力に恐れをなしていた。
「しゃあない!」
このまま指をくわえてみているわけにもいかず、セルペンテは急いで天守閣の中に入っていく。
さくらたちは冷蔵庫から恐る恐る鍋を取り出し、火にかけて温めた。
「作ったのは俺じゃないし、どうなっても責任は取れないからな……?」
カレーを少量おたまですくい、小皿に出してから温め、さくら、あおい、かりん、ひかりはスプーンですくって目をつぶって口にする。舌に乗せた瞬間の全員の表情は、とてもではないがおいしいと感じているようには思えなかった。
次の瞬間、テーブルに向かい合っていた4人は全員突っ伏し、寝息を立てたと思ったら姿を消してしまった。
「どうなってんだ……?」
「寝ちゃったってことでいいの……?」
「とにかくここを通常通りに営業しましょう、そうすればシュガームーンに行くつもりだった人がこっちに来て眠らされる人を減らすことはできます」
蓮たちは営業ができるように準備を進める。イナリも夢の世界に向かうべく小皿に少し残ったカレーを一口なめてみると、一気に眠気が襲いかかる。
「蓮、これ改良すれば何とか食べられるよ……」
なんとか一言だけ伝えてからイナリも眠ってしまい、姿を消す。食品ロスなどの観点抜きで客に出すのは難しくとも、自分たちのまかないにならできるのではないかは思っていただけになんとか改良する術はないかと頭の片隅に置きながら準備を進めた。
化学反応でご都合主義が発生したけど、二度同じ料理は作れないだろうなぁ。




