第弐拾伍幕の捌
海の家、開店です。
今年もサマーキッズの営業が開始、蓮は難を逃れた食材を使って焼きそばを焼き、あおいは業務用の焼き鳥を焼いていた。かき氷の準備をしていたかんなは、例年と違い閑古鳥が鳴いていることに疑問を抱き始めていた。気づくと、眠ってしまっていた店主の姿も見えなくなっていた。
「おかしい、いつもなら今頃お客さんでごった返してるはずなのに……」
「もしかして……!」
あおいが外に出てシュガームーンの様子を探ると大行列、こうなったら潜入捜査だとさくらとあおいが列に並ぶと、列が前に進むにつれて寝息のような音が聞こえてくる。さくらが列を抜けて店の入り口近くまで行くと、なんと店内にいる客はみんな眠っていた。しかも、眠った人がどんどんその場で姿を消すという怪現象まで発生していた。
「これは……!?」
呼び込み班の二人も、やけに人が少ないと違和感を抱いていた。
そんな中、かりんを同年代だと勘違いした少年が声をかける。
「ねえ、どうしたの?」
「海の家のお客さんを探してるんだけど、なかなかいなくてねー……どうかな? かき氷やジュースもあるよ」
「今はお腹空いてないから大丈夫。それより、倒れてる人多いでしょ? あれ、紫のビキニを着たお姉さんの仕業なんだ」
有力な情報提供者が現れた。なんでも、彼が海で泳いでいた時に彼女が声をかけた相手が途端にその場で倒れ、彼女が気になって動向を追っていたら同じことが何度も起こっていたというのだ。
「ありがとう! お姉ちゃんちょっと友達に話してくるね!」
かりんはお礼を言うと、スク水の尻の部分が食い込んでいたのを直しながら走り去って行った。
彼女の背を見送った少年は、自分のことを「お姉ちゃん」と言っていた上にその後話していた相手が彼女とは正反対のナイスバディだったことに気づく。少年は熱中症でもないのに頭がくらくらする感覚を味わっていた。この夏、少年は大人の階段を一歩登った。
「まさかまたあの団体じゃないわよね……?」
かりんから話を聞いた桃香は、蝶ネクタイにメガネの少年探偵のごとく自分は行く先々で事件が起こる体質なのではないかと疑い始め不安な声をあげる。
「聞き捨てならないですね」
彼女たちの前に麦わら帽子を深くかぶった紫のビキニの美女が立ちふさがった。
「こんな子どもに私たちの崇高な目的がわかるわけないか」
子どもと間違われ苛立つも大人の対応を続ける桃香だったが、麦わら帽子の奥から彼女に見つめられた途端力が抜けてその場で倒れこんでしまう。エリーが彼女の顔近くに耳を向けると、寝息が聞こえてきた。
見た目は子ども、頭脳は大人、実年齢は20代!




