第弐拾伍幕の弐
政治に巣食う悪、リアルで恐ろしい。
「……はっ! 美女たちは……」
幻覚が切れた片桐が伊達政宗像に目を向け、大急ぎで台に登って眼帯を外すもそこはすでに空っぽだった。悔恨の表情を浮かべながら、彼は仙台の地を後にした。
さくらがサッカー教室のサポートから帰ってくると、町内会の旅行に行っていた幹夫が旅行から帰ってきたとは思えない不満そうな表情をしているのに気づく。
「おじいちゃん? どうしたの?」
「どうしたもこうしたもないんだ! 聞いてくれ!」
普段であればこんな姿になることなどめったにないほどに憤慨している幹夫がなんとか自分を落ち着かせながら話す。
町内会で温泉街に慰安旅行に行き、食事はおいしく、温泉も気持ちがよかった。しかし、駅前では連日地元の県議会議員が市長によるセクハラを受けたと主張し、それを認めるよう取り巻きを引き連れて抗議活動を行っていたという。
しかし彼の顔を写真で見る限りそんなことをするような人物にはとてもじゃないが見えないといい、さくらとイナリも画像を見せてもらったが同じ感想を抱いた。
「ねえ、県議会議員の人の名前って覚えてる?」
「確か……」
県議会議員の名前は辻千束、検索してみると彼女もまたP&Lの後援会に所属していることがわかった。
その当人は、リモートで姫と話をしている最中であった。噂をされていた証拠に大きなくしゃみが出てしまった。
「……失礼いたしました。しかし、姫の理想郷を否定する者への罠はしっかりと仕掛けておきました」
「さすがは亀井さんの懐刀。あの町はウシ娘とかいう女性蔑視の気持ち悪い漫画を応援している一度滅ぼして建て直すべき自治体、明るい未来のためにはあなたの手腕にかかっていますよ」
ウシ娘とは、牛肉の部位を擬人化した美少女キャラクターで、日本各地で牛肉の振興キャンペーンを行うだけでなくメディアミックスも幅広い層から人気を獲得しているコンテンツである。
「ですがどうやら……他にも潰すべきものはありますね」
姫が顔をしかめながら、スマホの画面の中で楽しそうに夏を満喫している美女たちの姿を見せる。辻もまた顔をしかめると、亀井が立候補した選挙区が海沿いの町で海水浴場もあることを思い出す。
「いい見せしめになることでしょう。あとはこっちでやるからあなたはやるべきことをしっかりとよろしくね」
「はい、我が姫」
リモートでの通話を終えると、ナフ・ヴァルキリーを招集して作戦を通達する。今回も複数人での出撃が決まった。
いつものことながら姫は余裕がないようで複数人が出撃、力と技の風車が回るライダーの序盤でもなきゃ戦力を倍速で減らすだけになるぞ?




