第弐拾肆幕の拾陸
一般高校教師、キレた!!
小さな体が何倍も大きく見えた。普段の彼女を知る者からしたら尚更であった。
「さっきから聞いてればあなたたち、ただの自分勝手な団体じゃない! 責任者の意向なんだろうけど、都合が悪くなると自分たちを慕っていた子どもに死ねって言うなんてそんなことが許されるわけないでしょう!?」
かぐや、さくら、ひかりが放送室のガラスを割って飛び降りてくるダイナミックな登場で援軍として駆けつけたにもかかわらず、そちらに視線がいかないほどに桃香は怒髪天を衝きながらステージの階段を上っていた。
それに負けないほどの強さを誇る電磁波が地面に直撃して起きた衝撃波はホール内にも伝わり、大急ぎで戻ってきた蓮から馬込に直撃したことが振袖小町にも伝えられると、負けを認めようとしない蘭を諦めさせることが今の目的となった。
「私は諦めない、姫のために……!」
「排斥制環」
かぐやは味方であるはずの蘭の頭にリングを放ち、彼女の動きを拘束する。
「お前、姫を裏切るのか!?」
フレンドリーファイアではない意図的な拘束、かぐやは冷たく言い放つ。
「あんたの意思は姫の意思じゃないから。これ以上やっても負け戦になるのは目に見えてるの。それとも夕香里や沙羅みたいになりたいの?」
これ以上の抵抗は無駄と判断し、蘭は両腕をあげ降参の意思を見せる。
「じゃ、またね。ひかり、今度会ったらボロボロのギッタンギッタンにしてあげるから、楽しみにしてなさい」
かぐやと蘭が撤退。P&Lのメンバーの洗脳を解くことはできなかったが、来場者に降りかかった恐怖は振り払うことができた。
「ありがとうございます、助かりました」
あおいがそれだけ告げて、振袖小町はバラバラに去って行った。その後戻ってきたさくらたちは廊下や外で避難誘導をしていたと話した。だが、彼女たちがいない間に振袖小町が入れ替わるように駆けつけていたことに桃香は違和感を覚えていた。
「(まさか火宮さんたちが振袖小町……なわけないか。でも、うちの学校何回か襲撃されてるし……)」
結局また本来の目的を果たせぬまま帰宅する時間となってしまった。だが三度目の正直を願い、P&Lのメンバーの洗脳を解くことは二度あることは三度あると信じて小町部は家路に就いた。
「久しぶり、二人きりだね」
「……卯月、生きてたんだ」
放送室を出たひなたと卯月は、エントランスロビーで向かい合って座っていた。かつて同じ釜の飯を食った仲とは思えないほどに緊張感の走る再会だった。
「単刀直入に聞く。姫って……あなたのお姉さん、本橋千花でしょ」
図星を突かれたという表情に、答えを聞くまでもないという表情を返した。
「……やっぱり。前からずっとあの人からは早く逃げてって言ったのに、どうして……?」
本気で心配している目だった。しかし、ひなたは何も答えられなかった。
「……とにかく、今のままじゃ世界はもっとめちゃくちゃになるし、あなたにとっても絶対いい結果にはならない」
卯月は席を立ち、背を向ける。
「いざとなったら……私が止める。あの女のことやっつけて、助けてあげるから」
顔だけひなたの方に向けて、一言だけ忠告してから放送室を後にした。彼女の頬には一筋の涙が伝っていた。
誰もいないホールのステージでは、さくらにP&Lのやり方に異議を唱えられた杏夏が気配を消していたことが仇となり仲間に忘れ去られて自分だけ取り残されたことに気づき、一人で佇んでいた。
「私は、どうすれば……?」
姫の正体が一つ分かりました。しかし彼女をどう倒すのか……?




