第弐拾肆幕の拾参
見えない敵を斬れ。
不審に思って足元に落ちていた石を投げてみると、ある一定の場所を通過した途端に石が消滅していった。これでは逃げようがない。念のためもう一度違う場所から別の石を投げると、前よりも消滅するまでの距離が短くなっていた。
「大変だ……!」
バリアによって外側からホールが破壊される、それすなわち内部に取り残された人々の死を意味する。なんとしても止めなければならない、改めて気を引き締め内側からのバリア破壊を試みたが傷一つつかなかった。
「ここも違う、ここも……」
ひなたを探すさくらは、彼女が放送をしていたことから放送室を探すが、フロアマップからそれらしきものが確認できず難航していた。しかし、廊下のある場所を通ろうとすると必ず前から押されて転んでしまうことに気づき不審に感じる。
「見えない壁でもあるのかな?」
何か仕掛けがあるはずだとイナリが小さな体を生かし廊下の端を通ると簡単に通ることができた。勘付いたイナリは廊下のど真ん中に向かって飛び掛かった。
「わっ!」
どこからともなく不意を突かれた時に出る声がするとともに、さくらの目の前にオレンジ色のサリーを模したFFVを身に纏ったナフ・ヴァルキリーとして新橋杏夏が悔しそうな表情を浮かべながら姿を現した。
「あなた、姿を消せるの!?」
「いや、そうじゃないみたい。姿は消えてない」
「バレちゃったのなら仕方ない、私はこうして……」
言葉を止めると同時に、彼女の姿が視界から消える。
「気配を消すことができるの!」
尻切れトンボだった言葉を再び言い始めると、また彼女の姿が視認できるようになった。彼女によれば透明になれるわけではなく、振袖小町がホールに駆け付けて避難誘導を始めるまでずっと後をつけてホールに到着するのを妨害したほか、控室に鍵をかけて回ったり、避難誘導のどさくさに紛れてひなたがいる場所に辿り着かないように通行の妨害をしたりしていたという。
「だからホールに着くのが遠く感じてたわけか……」
合点がいったが、それとこれとは話が別、ここを通しひなたに会わせるよう頼むが拒否される。
「姫のためにここを通すわけにはいかない」
ここまで徒労を極めたさくらはこれ以上の無駄足は勘弁してほしい、そして必要以上の苦労をさせられた元凶が目の前にいるという思いからずっとP&Lの動きで疑問に思っていたことを投げかける。
「あなたたち、姫が大事なのは分かったけど、これまであなたたちが起こしたことは自分の意思で動いて行動してるの?」
全く思いもしなかった質問を投げかけられ、杏夏は動きが止まる。
「あなたたちが創ろうとしている女性だけの世界、手放しでは賛成できないけど同じ女として思うところはある。でもあなたたちがやっていることの先にできるのは姫にとっては理想だけど他の人にはそうじゃないはず。それでも言うことを聞くの?」
「……それは……」
口ごもる杏夏の横を通り過ぎ、さくらは放送室の扉を開けた。
自分の意思で行動する、人生においてめちゃくちゃ大事。




