第弐拾肆幕の玖
この質問、あなたはどう答える?
「スキロスに飯おごってたお姉さん! どうしてP&Lに!?」
「ほんとだ! 蘭様!! ……と誰?」
「蘭様」とは蘭のDianthusfrom.JPNで活動していた頃のニックネームで、彼女の中性的な麗しさを称えた尊称でもある。
「あら? 私のことを知らないなんて振袖小町は女性のための社会を創るつもりがないようね!」
「世の中は女性だけのものじゃない!」
馬込は目の前で少年たちが肩身の狭い思いを強いられてしまっている姿を見たアイリスの言葉を鼻で笑う。
「ですが、社会人として自己紹介だけはしておきましょう。私は馬込亜沙美、女性が女性らしく暮らすために日本、そして世界を変えていくために活動している者です」
桃香がそちらに注意を向けている間にさくらたちはホールからこっそりと姿を消す。彼女たちが出ていったドアが閉まった後再びドアが開き、閉じたことに隣のドアの近くにいた蓮は違和感を覚える。
「皆さん、これから私たちが質問をします。正しいと思った方に拍手を下さい。ではいきます」
馬込による前置きが終わり、蓮、かんな、そして桃香は様子をうかがいながら避難させるためにバラバラになってドアの近くに移動した。
「ある会社で女性社員にセクハラを行った男がいたことをSNS上で報告している女性がいた。男に対してどう対応する? なお、この男はあなたと面識がないものとする」
桃香は言い方に引っ掛かりを覚える。
「警察や法律に任せる」
セクハラは許されないことであるが、自分とは面識のない人物のことだから至極当然な答えではあるが、拍手の音は一切聞こえなかった。
「相手が自殺、あるいは破滅するまで社会的に追い詰める」
どう考えても非常識な選択肢が出てきたことに心ここにあらずといった表情をした少年を避難させようとしていた蓮や、話に夢中になっている少女にここから離れようと説得をしているかんなは唖然とする。こんな選択肢に拍手は起こらない、そう信じていたのも束の間、少女や女性からの万雷の拍手が響いた。
「その通りです! 皆さんは賢いですね!」
明らかに異常な状態の空間にいる、これは人々の避難が急務だと悟った桃香はドアの近くの席に座っていた一人の少女のもとに近づいて彼女の目線になるようしゃがんでから声をかけるが……。
「ねえあなた、一緒にここから出ましょう? お姉さんはあの人の言っていることは違うと思うな」
「男の肩を持つの?」
吐き捨てるように少女が返す。
「いいえ、そういうわけでは……」
「今こうして汚らわしいオスと同じ空気を吸っていることすら嫌、でも姫のありがたい考えをこうしてみんなと共有できる幸せには代えられない!」
返事が明後日の方向に行っているが、今回はいつもより少し年齢は低いものの未成年を相手にしている職業に就く者として桃香は説得を続ける。だが、耳を貸す素振りすら見せず蘭による質問は続いていく。
スキロスに飯おごってたお姉さんと称されてたイケメン女子が闇落ち、落ちぶれてすまん!




