第弐拾参幕の陸
戦いは東京で起きてるんじゃない、日本で起きてるんだ!
「……さて、ここで各地に飛んでくれた諸君の活躍を見ておこうか」
廃屋の大部屋でカルネロが大きなモニターを前にチュイとボヴィーニ、小菅をオーディエンスにして争奪戦の途中経過をリアルタイムで観戦していた。
映ったのは大阪、道頓堀。万歳しているマラソンランナーをはじめとする多くの看板の近くにかかった戎橋にたくさんの人々が集まっている。その中でキマと京田がすれ違った。
両者と面識がある側からすればこれから何か起こるのではないかとチュイはわくわくした目で見ていたが、生憎当事者同士に面識はないため何も起こらなかった。
「なーんだ、面白くないや」
チュイががっかりして離席しようとした瞬間、画面内で異変が起こる。手首に付けたMUJINAが光っているキマと手元を見ている京田の二人が道頓堀川の方に同時に目を向けたのである。これから何が起こるのか、チュイは手に汗を握り、ボヴィーニは静観、小菅たちは冷めた目で見ていた。
献血センターの見学は予定通り決行、希望者のみ献血を受けることとなり、さくらとかりんを除く4人、そして引率者である桃香と百合が献血を行った。
「火宮さんにそういう事情があったのは初めて知ったわ。この前の入院もそういうことだったの……それじゃあ無理に献血するようには言えないわね」
さくらが献血をしなかった理由をあおいから聞いた桃香は、いつも明るく天真爛漫な彼女にあったとはとても思えない抱えていた忌まわしい過去のトラウマを聞き、ぐっと涙をこらえていた。
彼女たちの血液はこれから血液センターに輸送される。保管された血液を積んだところで運転手がドアを閉め、キーを挿してエンジンをかけようとするが、なかなかうまくエンジンがかからない。
やっとかかったと一安心したのも束の間、運転手が想定しているよりも速い速度で車は走り出す。彼は一抹の不安を抱えながら出発したが、それは現実のものとなってしまうとは知る由もなかった。
「次は何見ようかな……」
紙にまとめてある教えてもらったおすすめのアニメのリストを片手にひかりはどれにすべきか迷っていたが額の石を光らせたイナリが声をかける。
「一旦中断しなきゃダメみたい」
これまでに見た作品の一つである高校生の漫画家とそのアシスタントが主人公のアニメのOPのタイトルをもじって敵の出現を知らせた。
後の楽しみができたと気持ちを切り替え、さくらたちのいる献血センターへとひかりは駆けていった。
ロンは誰も来る気配のない事務所跡で先日購入した茶葉の袋を開け、ゴールデンルールに基づいて慣れた手つきで紅茶を淹れる。冷めないうちに飲むがどこか味気なさを感じ、ティーポットに目を向けると一人で飲むには多い量になっていたことに気づく。
「(慣れとは……なかなか抜けないものだな……)」
仲間たちの帰還がいつになるのかは予測ができない中、ティーカップに入った紅茶に映った彼の表情は憂いにあふれていた。
おいしい紅茶を淹れられるのはいいけど、やっぱ独りで飲むのは淋しいよね。




