第弐拾参幕の伍
かりん大いに怒る。
帰り道、イナリはかりんの怒りの原因がわからずさくらに質問する。
「さくら、かりんがあんなに怒ってたのは何が原因だったの?」
「それがね……」
さくらは困った表情で答える。彼女が言うには、ここ最近かりんが好きな作品がことごとく狙い撃ちされているかのようにアニメや漫画などのサブカルチャーを嫌うたくさんのアカウントに攻撃される事例が多発しているという。
一例として、先日新聞に一面丸ごとの記事を掲載した毎週木曜日に必ずトラブルに巻き込まれる少女が主人公の漫画「木曜日にはわわ」の広告が槍玉にあげられて「こうやって女がトラブルに巻き込まれるのを楽しんでいるのか」、「胸の大きな女性の生きづらさを軽視している」といった批判が巻き起こっていた。
さらにこういった事例は客観的に見て容姿の整った実在の女性がイメージキャラクターとして起用した企業に対して憎悪を向けているケースも発生しており、フリーモデルが体型を根拠に誹謗中傷された一件を語り、罪のない女性がどこの誰ともわからない見ず知らずの相手から理不尽に攻撃されているという現実にイナリは怒りに燃えていた。
「……なんでそんなことするんだろう?」
ひかりが行動の理由に理解できないと疑問を抱くと、さくらが口を開く。
「世の中には幸せになっちゃいけない人なんていない、って私は思うけど、そうは思わない人がたくさんいるんだって思った。でも、そういう人たちは自分の人生に満足してないから誰かが幸せになってるのが許せないんじゃないかな」
「……可哀想な人がいるんだね」
「そんな人たちにとって、誰かを攻撃することは満足するための手段でしかない。P&Lはそういう人たちに誰かを傷つけることに正当な理由があるって考えを広めることも目的なのかもしれない」
さくらの言葉にひかりは過去の自分の行いを思い出した。友情を何よりも憎み、世界を変えることを大義名分に破壊の限りを尽くした者としてその禊の道は険しく、とても長いことを改めて感じた一幕だった。
「人間は今までにたくさんの間違いを犯してきたけど、それが罷り通るとこれまでの歴史上の出来事よりもっと恐ろしいことが起こる、僕はそう感じる」
人間ではないイナリからの目線でもこのままではいけない、そう感じてならなかった。人間とは地球のがん細胞であるという言葉があるが、そうならないためには自己中心にならずに生きていかなければならないのだろう。
誰かの幸せを妨害する身になってはならない、身につまされます。




