第弐拾参幕の弐
P&L、絶賛勢力拡大中。
ナフ・ヴァルキリーに招集がかかり彼女たちが到着した頃、P&Lの応接室には3人の女性が通されていた。
「ようこそ、私の家臣たち」
姫に謁見に現れたのは、離婚問題やセクハラなどに強い女性弁護士の保谷夕佳、元グラビアアイドルで現在は男尊女卑を打ち破るための社会活動家をしている馬込亜沙美、そして野党第一党である共民党の現職国会議員の亀井香菜子。それぞれ違った業界で活躍している女性だが、彼女たちはP&Lの活動や姫の思想に共感し支援者となり、姫の真の目的を知るとさらに感銘を受け、それを現実のものにするため表裏両方の部分で支援をしている。
馬込は近くから漂ってくる匂いが気になりつつも緊張が解けたと感じている一方、保谷と亀井はかつてグラビアアイドルだった馬込が同じ場にいることに不信感を抱いていた。
「まず、保谷弁護士。あなたのおかげでこの世界にあってはならない存在への糾弾ができました。あなたには我々の次の作戦の補佐をお願いしたいと思います」
「もちろんです、ありがたき幸せ」
保谷は恭しく頭を下げる。馬込と亀井も彼女のような機会が回ってくることを願いながらその場を過ごしていると、ドアがノックされる。
「姫、ただいま参りました」
「どうぞ」
出社したOLのように慌ただしく着替えを済ませ、P&Lのメンバーとして人前に出る用の服を纏った姿でナフ・ヴァルキリーが到着する。応接室に入るなり漂ってきた異臭にかぐや、沙羅、香澄が一瞬顔をしかめるが、皐月は何事もないかのように欠員が出たが改名するのか尋ねるが、その必要はないと切り捨てる。
「あなたたちに紹介します。こちら、弁護士の保谷先生。社会活動家の馬込さん。都議会の亀井議員。挨拶して」
紹介された3人によろしくお願いしますと言いながらナフ・ヴァルキリーは軽くお辞儀をする。
「さて、本題に戻りましょう。皆さん、保谷先生が先日疑問を投げかけた件は知ってますね?」
「はーい! あのキモいやつですよねー!」
沙羅が大きな声で返事をする。保谷たちはなんて不躾な小娘だと感じるも感情を噛み殺す。
「そうそう。それそれ。あれがまかり通ってしまうとただでさえ我々に無理解な日本人がさらに汚染されてしまいます。それを防ぐべく活動しましょう」
「やるやる! それあたしがやる!」
挙手して立候補したのは沙羅だった。
「いいでしょう。決行は三日後、当日の動きはあなたに任せます。先生としっかり協力するんですよ」
「はい、我が姫」
沙羅は姫の前に立って跪き、彼女の手に着いたブレスレットに姫が口づけをする。
「(小娘が調子に乗って……!)」
「(若いからっていい気になるんじゃないわよ……)」
馬込と亀井は姫の寵愛をここまで受けている彼女に羨望と嫉妬を抱いていた。
「(私ももう少し若ければ……!)」
作戦の担当となった保谷も似たような思いを抱いていた。彼女たちの気持ちを知ってか知らずか、姫はそんないがみ合いはどこ吹く風でひまりの肩を叩く。
「あれの準備はもうできてるんでしょうね?」
「はい……」
他の相手とは大違いな態度の指示で、姫はひまりに彼女の研究室にある「あれ」と称されたものを取りに行かせた。彼女の重い足取りを目にしても同情や憐憫といったような感情を抱く者は皆無であった。
数刻後戻ってきた彼女は、手に持ったアタッシェケースを開き中身をナフ・ヴァルキリーたちに配っていく。その見た目は、自分たちが付けているものと同型ではあるが中心部に振袖のカケラが変化した結晶が付けられていないブレスレットだった。
「姫、質問が……」
「いいから渡してきて」
そのまま彼女たちはP&Lに保護された少女たちがVRゴーグルをつけて集まっている部屋を手分けして回っていき、一人ひとりに量産されたブレスレットを支給していく。渡された少女たちは無表情ながらもうれしさをにじみ出しており、もともと姫を崇拝しているかぐやと洗脳されている面々は達成感を味わっていたがひまりは彼女たちまでもが戦いに巻き込まれることに負の連鎖を止めるすべはないのかと自問自答していた。
洗脳したわけでもないのに悪に手を貸す狂った大人たち、現実にもいるから恐ろしい。




