第弐拾弐幕の拾参
思わぬ助っ人、参戦。
巻き込まれた人々は耳に入った姫の声に反応し、夕香里を360°囲んで次々と平伏していく。この異様な光景は今すぐ止めるしかない。さくらとかりんが夕香里に向かって走り出そうとした瞬間、ホログラムを消してピュイサンス・ファムを卯月に向ける。
「あら、邪魔をしたら卯月ちゃんが怪我しちゃう、いいのかなー? もっとも、それですめばまだいいけど」
「(私がやらないと……でもどうすれば……)」
人質に万が一のことがあったらと思うと、アイリスは足を止めざるを得ない。そんな中、平伏していた人たちの様子が変わる。
「久しぶりだったが、品ぞろえは変わってなかったな……。俺の顔を知っている店主が留守で助かった」
小さな紙袋を手に、ロンは戦いやオリエント・ゾディアックの仲間とともにいるときには決して見せない満足げな表情で雑居ビルに戻ろうとしていた。だが、その表情もすぐに別れを告げる時が来てしまった。
「この殺気は……!?」
彼の体内にある振袖のカケラが感じ取った殺気を感じる方向へと駆ける。
「!? 鍵がかかっている!?」
エントランスの自動ドアが開かず入れないことに強行突破を検討していた頃、ちょうど同じタイミングで、蓮とひかりも到着していた。
「ロン! 一体なんで!?」
「プチッツァ! ここにいるのが例の……!?」
「説明は後にして、ここを突破しよう! 開花!!」
仲間だった彼女が敵対関係にある振袖小町として並び立つ。ロンからすれば不思議な感覚だったが今は共同戦線を組み、刀を口には咥えないが三刀流を二人で披露して鍵のかかったドアを破壊。二人の刀の使い手と敵の待つ場所へと走り出す中、蓮はロンが持つ小さな紙袋が気になっていた。
「あの袋のロゴ、確か……」
今は目の前のことに集中すべく考えないようにはしていたが、戦い一辺倒の人物が持っているには不釣り合いなものは嫌でも印象に残ってしまっていた。
「あれ……?」
「私何してたの……?」
正気に戻った人々をかんなが誘導して避難を開始する。
「この能力、短時間で切れるのが玉に瑕なんだよね……こうなったら! 衰頭喪気!!」
自らの力が抱える弱点にもどかしさを感じつつ、夕香里は右手をピュイサンス・ファムに手を当てると、宝石が光る。そのまま一回転してフラメンコの決めポーズを取る。すると彼女を中心に波動が広がっていく。
「皆さん立ち止まらないで! ……どうなってるの!?」
夕香里はステージ上で踊りを止めず、ポーズを取るたびに波動もひっきりなしに放たれる。振袖小町は振袖のカケラの力で浴びても意気消沈はしないが、卯月が人質に取られているうえに波動で動きが跳ね返されて近づけない。八方塞がりかと思ったその時、扉が開く音と廊下の照明の光がステージに入ってくる。
踊り続けるのはなかなか体力勝負になりますね。この子、かなりタフでは?




