第弐拾弐幕の拾
悪い奴らは天使の顔して心で爪を研いでいる。
火宮家、水崎家、木谷家、つつじ荘のかんなが住んでいる201号室は一斉にテレビをつけ、同じチャンネルに回す。すると全員がアイリスと同じ既視感を覚えた。何より、彼女が画面に映った途端イナリは鳥肌が立って不快感を示していた。
「先日都内で大量発生した家出少女の保護に尽力したんですよね?」
「はい、彼女たちを見て私は思いました、現代の日本は女性にとってまだまだ本当の自由を手にするまでにたくさんの障壁があると。こういった少女たちは搾取されている、それは振袖小町たちもそうなのかもしれないと感じております」
司会者からの質問に彼女は誇らしげに答えた。
「と、言いますと?」
「彼女たちはおそらく中学生から高校生くらいの年頃、私が保護した少女たちと同じ年頃です。もしかすると彼女たちは誰か大人がバックについていて、彼らの操り人形に過ぎないのかもしれません。それに……」
「それに?」
「あの子たちも本来は普通の女の子、自由であるべきです。振袖小町という役目に縛られているのでは?」
スタジオ内はなるほどという空気に包まれていた。全国ネットで放送されている番組から流された言葉には、彼女の社会的立ち位置も含めた説得力が含まれていた。
「……何あれ、私たちのこと全然わかってない」
さくらはグループトークで怒りをぶちまけていた。
「確証はないけど、あの人きっと姫だよね……」
「この前謁見の場所になった団体の代表でしょ、こっちからすれば正体を隠してないようなもんだよ」
「でもなんで私たちのことを言及したんだろう、あんな邪推までして……」
疑問は尽きなかったが、蓮が一つの疑問を投げかける。
「話変わるんだが、今日アイリスがP&Lの敵と勝負の約束してたよな? それってつまり否が応でもオーディションに出ることになるんじゃねえか? 関係者以外はお断りだろうし……」
「「「「「あ」」」」」
全員が後先を考えない選択をしていたことにここでやっと気づく。彼女がなぜスカウトを受けていたことを知っていたかのような挑戦状を叩きつけてきたのかも疑問ではあったが、それは当日になればわかる、と割り切って決戦を待つこととなった。
一人蚊帳の外だったひかりは、かんなが連絡手段として使っていたスマホに羨望の視線を向けていた。
「(スマホ……あれがあれば……!)」
アイリスは名刺に描かれた連絡先に電話して、あらかじめ友人たちを応援として呼ぶことを条件に参加すると返答する。やってきた決戦の日曜日、先方からは制服で来るように言われていたためひかりを除く小町部は都内某所にある会場へと制服を着て向かった。
もっともらしいこと言って自分のエゴをぶつける人、いるよね。




