第弐拾弐幕の玖
悪役は良くも悪くも空気を読む存在。
「あなた、アイドルだったんでしょ? だったらそんな胡散臭い話よりも明るく楽しくみんなを振り向かせられない? もしかして、それができなかったから人気を得られなかったんじゃないの?」
普段のアイリスなら絶対に見られない容赦なく皮肉を浴びせていくスタイルに、さくら、蓮、イナリは渾身の料理を食べてもらえない事態を起こしたことに対する沸々とした怒りを感じ戦慄していた。
「ひっどーい! それなら今度の日曜日! ダリアプロダクションの新人オーディションの会場で待ってなさい!! それまで勝負はお預け!」
「その勝負、買った! 今度は自力でみんなを振り向かせてみせることね!」
果たし状を兼ねた捨て台詞を吐いて夕香里は去って行き、アイリスはその勝負に乗る。彼女は悲観的状態から救ってくれたことに人々から感謝され、ひかりはお手本のようなずっこけにお笑いのセンスがある女の子として人々に褒められていた。現場に駆け付ける最中にアイリスが芸能事務所からスカウトを受けたことはさくらから聞いていたあおいはなぜオーディション会場を決戦の場に選んだのかが気がかりだった。
けやきテレビの報道フロアでは、どのニュースをトピックスにするか悩んでいた。そこに、本日のゲストコメンテーターが姿を現す。
「おはようございます」
ゲストコメンテーターがスタッフに挨拶をして回り、キャスターとしてスタジオ入りしていた比奈にも挨拶をしてくる。
「菊池比奈さんですよね? 私、こういう者です。以後お見知りおきを」
渡された名刺の表面には、社団法人Paeonia & Lily 代表取締役社長という肩書と彼女の名前が、裏面には本部の住所とアクセスが書かれていた。
名刺を渡された後、他のスタッフに挨拶をして回る彼女の様子を見ていた比奈は、どこか違和感を抱いていた。
「あの人……相手によって挨拶の仕方が微妙に違うような……。言葉にしにくいけど、なんか嫌な感じがする……」
「本番入りまーす」
釈然としないが時間は待ってくれず、本番が開始される。比奈は慌てて席に着き、番組が開始された。
その日の夕方、帰宅したアイリスは自分が作ったはいいが邪魔が入ってしまい振る舞えなかった麵が伸び切ってしまった料理を食べていた。
「まったく、空気の読めない敵だったなぁ……何か面白い番組やってないかな」
リモコンを取って何の気なしにテレビをつけると、ニュース番組が放送されていた。時間的にまだ始まったばかりで、出演者が開始の挨拶を済ませたところだった。
「本日のコメンテーターには、貧困女性の支援を行う団体、Paeonia & Lilyの代表取締役社長を務めていらっしゃる……」
「よろしくお願いします」
「……この人!」
頭を軽く下げて挨拶する彼女の風貌と声にアイリスは既視感を覚え、小町部の仲間たちにすぐ連絡した。
皮肉はイギリス人の基本装備。これが出てるってことはアイリスさん相当お怒りのご様子です。




