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華のお江戸の振袖小町  作者: 水虎
第弐拾弐幕「信頼」
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342/350

第弐拾弐幕の捌

食事中でも出撃せざるを得ない、それがヒーロー。

「オリエント・ゾディアックかこの前の奴らかわからないけど、敵だ! みんな、行こう!」

 あまりにも良すぎるタイミングに内心嬉しさと驚きが共存しつつ、さくらが箸を持ったひかりを引っ張って出撃する。アイリスはせっかく作った料理が台無しになることに後ろ髪を引かれながら出発した。

 しかしこのとき、ひかりの顔色がどんどん青ざめていることに気づいていた者は、誰もいなかった。

 あおいたちと途中で合流し、目的地に到着。そこでは、人々がどんよりとしたオーラを放ちながら意気消沈していた。

「俺、なんで生きてるんだろう……」

「私なんていてもいなくても同じ……」

 理由もわからず落胆している人々は老若男女を問わず存在し、その中心には、一人の少女が立っていた。

「あいつは、この前の!」

「ゆかりん!」

 小町部は赤いフラメンコドレスのFFVを纏った彼女が元Dianthus from.JPNで今はP&Lに身を置く坂上夕香里だと気づいたが、彼女は人々の苦しむ声を聴いて道に迷える者たちに指し示すように高らかに宣言した。

「みんな聞いてー! 誰でもできるこの苦しみから逃れられる方法が一つだけあるの! それはね……」

「それは!?」

 答えが示される前にアイリスとひかりが彼女のもとに駆ける。しかしひかりの走りはおよそ本調子とは言えずふらふらとしていた。

「開花!!」

「か、かいか~……」

 アイリスは振袖小町になれたが、ひかりはなれず途中でずっこける。それもそのはず、彼女が持っていたのは簪ではなくアイリスの家から持って出ていった箸だった。それに気づいた小町部もずっこけ、さくらは彼女の顔色の悪さでこの事態の発生に納得する、

「ああ……食べちゃったんだねぇ……」

「古典的な変身失敗を目の前で見られるとは……もはや感動すらしてるよ」

 自分が持っていたのが簪ではなく箸だったことに気づいたひかりは青白い顔をしながら落胆していたが、今の今まで鬱屈としていた人々が次々に笑い始める。

「なんだかわからないけど面白い!」

「今まで悩んでたのがバカらしくなってきた!」

 同じくアイリスの料理の恐ろしさを身をもって味わった経験者のイナリはひかりに同情の目を向け慰めていた。

「うう……ちょっとだけパパとママの姿が見えた気がした……」

「大丈夫、あれを食べたら誰でもそうなると思うよ」

 笑い声の中で夕香里はひかりを一瞬だけ睨み、言葉を続ける。

「みんなー、聞いてー! 苦しみから逃れ、救われるためには、この世界を新しく創りかえて、みんなを導いてくださる……きゃっ!!」

 儚くも爆笑している人々には「苦しみから逃れ救われるための方法」を必死で伝えようとする夕香里の声は届かず、しかも途中でアイリスが放った豪拳・山吹の一撃で強制終了させられてしまう。

怪我の功名ってあるよね。

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