第弐拾弐幕の伍
運命の分かれ道は。
「結果発表ー!!」
大きく伸びのある声でかんなが宣言しながら、隠してあったそれぞれのくじの到着地点を開く。それぞれ確認を終えた後、安堵した二つのほっとした息をかき消すように二つの悲鳴が響き渡った。これが運命の分かれ道の全貌であった。
「今日はアイリスちゃんが料理作ってくれるんでしょ! 楽しみにしてたんだ!」
楽しみに満ちている彼女にこれから悲劇が降りかかることは目に見えていたが、言っても信じてもらえないこともまた目に見えていたためさくらたちは何も言わずに温かい目で見守ることにしていた。
「あー……俺、手伝おうか?」
「大丈夫、今日は私と鳥羽さんが仲良くなるためなんだから、ここは任せて」
腕まくりをしてやる気を見せるアイリス。そのやる気に反し、招待客という名の生贄たちの反応は……。
「(そうは言っても……)」
「(アイリスにだけは任せられないんだよなぁ……)」
「(もうあの地獄は味わいたくないし、誰にも味わってほしくない……)」
さっそく準備に取りかかるアイリスだったが、立ち上がった瞬間ポケットから名刺が落ちたのを見つけ、ひかりが拾う。
「芸能事務所……すごい、スカウトされたの!?」
「アイリスちゃんかわいいもんねー!」
「さくら、事務所?にスカウトされるってそんなにすごいことなの?」
「そりゃそうだよ、だって……!」
アイリスがモデルにスカウトされたことを自分のことのように盛り上がるさくらとひかり、イナリは彼女が芸能人になるかもしれないということだとさくらから教えてもらい驚愕する。そんな盛り上がりようをよそに、アイリスは他人事のように料理を始める。蓮は両方に嫌な予感を覚えていた。
名刺の裏面を見てみると、所属しているタレントの名前が連ねられてあった。その中には、因幡卯月の名前もあった。
「え、卯月ちゃんのとこ!? すごいじゃん!」
「卯月ちゃんは審査員なんだって。そういえばスカウトさんが人数足りないって言ってたけど来る?」
蕎麦を鍋で茹でてかき混ぜながら、さらっと卯月が特別審査員として来場することやオーディションの人数が足りないことも話すアイリス。
「(おいおい、オーディションなんて一緒に遊びに行くくらいの感覚で誘うようなことじゃないだろ……)」
蓮はこの辺りから使う食材から彼女が何を作るのか見出すことを放棄していた。
「それから、テーブルの上のティーポットの中に紅茶を淹れてあるから、よかったら飲んで。私紅茶にはうるさいから絶対みんなも気に入るはずだよ」
そうは言われても、彼女の料理の腕前を知っているさくらや蓮は飲むには躊躇してしまっていた。逆にそれを知らないひかりはすぐさま机に用意してあったお湯で温めた温かさの残るティーカップに注ぎ、遠慮なく紅茶を口にした。その味は……!?
甘く香るお茶はいかが?




