第弐拾弐幕の肆
絶対に負けられない戦いは日常にも潜んでいる。
「あれ? あおいちゃんとかりんちゃんとかんなちゃんは?」
さくらは3人が不在である理由をアイリスに伝える。プチッツァとの戦いで負傷し入院を余儀なくされたエリーが無事に退院できることになり、本日がその退院日のため病院まで迎えに行き、そのあと合流するという。
イナリが不服だったのはこれまでに唯一彼女の料理の犠牲者になったことがあるため行きたくないとごねていたところを料理が食べられるというのに嫌がることが疑問だったひかりに捕らえられて強制連行されてしまったからである。
アイリスとひかりには内緒だが、数日前に5人は議論になっていた。その舞台は、あおいと蓮の家であった。
「みんな、どっちがいいかせーので言うよ、せーの……」
「「「「「病院!」」」」」
残念だが当然の結果である。しかし、アイリスとひかりだけにすると何が起こるか想像もつかない。
アイリスが錬成してしまうダークマター……もとい、世界に一つだけの独創的な料理が誕生する瞬間を少なくとも誰かが見届けなければならない。公平を期するべくあおいが提案したのは……。
「あみだくじ……」
「待った!」
開始前にかんなが意見を述べる。エリーは自分のメイドであり、負傷も元はと言えば自分に責任があるため主人として退院を見届ける義務があると主張する。
さくらたちは審議に入り、しばらくしてから蓮が前に出る。
「えー、審判の水崎です。今回の金丸選手の主張は客観的に見て正当な内容であり、そして彼女の立場を鑑みて料理という名の謎の物体を口に入れることを回避するための口実ではないとしてあみだくじの免除を認めます」
かんなはほっと胸をなでおろす。彼女には彼女なりの責任というものがある、それがこの結論がでた理由だった。
「アイリス主催のひかりの歓迎会に行く、あたしと一緒にエリーの退院の迎えに行く、それぞれ2人ずつ! どっちになっても恨みっこなし! それでは各選手ジャンケンの準備をしてください!」
じゃんけんで順番を決め、一人ずつ運命の選択を終えていく。
「(何が出てくるかわからないうえに絶対においしいわけがないものは食べたくない……!)」
「(ひかり、ごめん! 仲良くなって早々だけど、別の理由でまた病院行きは勘弁して……)」
「(そもそも私はまだあの子のこと信用できないしなぁ……)」
「(申し訳ないがこの役目だけは誰かに代わってほしい……!)」
4人は同じ思いを抱えながら、あみだくじに沿って動くかんなの人差し指の行く末を見守った。人差し指が止まると、彼女が誰のくじだったのかを忘れないように名前を折り曲げて隠してある部分の手前に書き込む。これが4回繰り返された。
アイリスに名刺を渡した後も、樫井は町でめぼしい人材に目を付けながら女子中高生をスカウトしていた。が、状況は芳しくなかった。ベンチに座りうなだれていると、一人の少女が彼に声をかける。
スカウト対象があちらからやってきたと襟を正し、彼女の顔を見ると、対象にはならないため肩を落としていた。しかし彼女からの一言に樫井はガッツポーズをする。そんな彼女は、ひそかにニヤリと笑っていた。
勝負の結果は後日、お楽しみに。




