第弐拾弐幕の参
芸能界に興味はありませんか?
P&Lの本部にある姫の部屋に、ナフ・ヴァルキリーが普段着で集まる。すると、メールの着信音が部屋の中にこだまする。
「今のは何かしら?」
着信音を鳴らしてしまったのが夕香里だと気づいた姫は彼女の前に立ち、何の着信だったのか尋ねる。
「……なるほど……」
内容を把握した姫は彼女に出撃の指示を出す。夕香里はその場で跪き、手に付けたブレスレットを前に掲げ姫はそれに口づけをする。
夕香里の出発後、姫は作戦の全貌を話す。洗脳されたメンバーたちが拍手を送る中、ひまりとかぐやは彼女らしい策略だと口や表情に出さずとも心境はざわつき始めていた。
「……さて、私の賛同者が全国に出てきているようですし、運命の日も近づいてますね」
そう言って姫はタブレットでSNSを開くと、全国各地で彼女の思想を広めようと意気込み、行動を起こすことを表明している者がいることが確認できた。彼女は仮面越しに邪悪な笑みを浮かべていた。
翌日、アイリスは学校帰りに上機嫌で商店街を歩いていた。彼女のカバンの中には普通に考えたら一つのレシピにはなりそうもない食材がたくさん入っていた。
そこに、スーツを着た一人の若い男性が声をかける。今のように学校から帰る途中に彼と同年代の異性からナンパをされた経験があったアイリスは、最初は警戒していたが目的が違っていたことを知り彼の話を適当に聞く。
「せめて、名刺だけでも」
芸能界デビューなど一切考えていないアイリスだったが、受け取らないと離れてくれそうにない空気を彼の全身から感じていた。
「はぁ……」
名刺をもらうだけであればこちらからアクションを起こさない限りはその後何も起こらないだろうと思ったアイリスは名刺を受け取り、スカウトマンは去って行った。そこには、「株式会社 ダリアプロダクション モデル発掘事業部 樫井亮吾」と書かれていた。
「(私が、モデルねぇ……)」
アイリスは自分が脚光を浴びる立場になることに違和感を抱きながら名刺をポケットにしまい、家路に就いた。その光景を一つの影が見張っていたとも知らずに。
同じく、彩羽高校からの帰り道を歩く一人の少年がいた。彼は誰も近寄ってはならぬと言わんばかりのオーラを放ちながら歩いていた。たまたま目が合ってしまった小学生は何も言わずともあふれてくる威圧感に怯えて逃げ出してしまうほどだった。
「ったく、何なんだあの医者は……! 未成年だから保護者の許可を取れはわかるけどさ……どうなってやがる!」
納得のいかぬまま家路に就いていた彼は、アイリスとすれ違う。疑問を抱えた彼女の表情を横目に見て、理由はわからずとも憎たらしい相手が悩んでいると思わしき姿にいい気味だとほくそ笑み、松葉杖の音がそれに同調していた。
日常の中にある非日常を経験してから自宅に着いたアイリスを待っていたのは、ワクワクした目のひかりと、それを見て複雑な表情をしているさくらと蓮、そして不服そうな表情をしたイナリだった。
芸能界ってハーフ多いよねー。




