第弐拾弐幕の弐
敵だった奴が味方になると意外な一面を見せることが多いが、ひかりの場合は……?
あみだくじによって運命を決めることとなった10人はそれぞれ出発点を決め、左端のくじを選んだものから順番にたどっていく。
それぞれ終点部分に名前を書き、折って隠してあった結果を開いて確認する。事務所跡と廃屋の両方から10人の一喜一憂の声が聞こえた。
姫との謁見の日の夕方。ひかりはかんなが住むつつじ荘の彼女の部屋に居候していた。それに際して、彼女は一つの問題に直面していた。
「かんなー、おかわりー」
この日の夕食はカレーだったのだが、既に鍋の中にあったルーも炊飯器の中の白米も底をついていた。
「まだ食べるの……!? このシチュはきゃぱい……」
「シチュー? これはカレーだよ? シチューもあるの?」
普段であれば一人暮らしのかんなが同じ鍋で同じ量のカレーを作った場合、冷凍にして数日は食事に困らなくなるのが、ひかりが居候して以降はそれがたった1食でなくなってしまう事態に急変した。それどころか彼女曰くまだいけるとのことで、ここ数週間でこの部屋のエンゲル係数は一気に跳ね上がってしまった。
ひかりが居候することを伝えた当日のことだったが、管理人の蓑輪からおかずを分けてもらったこともあったが焼け石に水で、二人分をその日のうちに一人であっという間に平らげてしまったこともあった。しかも、毎日のように食べまくっていることからこれまでにかなりの量が彼女の胃袋に消えていったにもかかわらず体型は一切変わっていないという奇妙奇天烈摩訶不思議な現象まで発生していた。
少し不思議な世界観が持ち味の作品などではサラリーマンが専業主婦と子ども、そして非人間で大抵は大飯食らいの居候という家族構成でも赤字や財政破綻が一切起こらない家庭が物語の中心になるが、大会社の令嬢(家出中)の身では自分の食費だけでも最低限にしておきたいところなのが本音だが今の状況では夢のまた夢である。
「……質問なんだけど、前からこんなに食べてたの?」
かんなの疑問に、ひかりは昔を振り返りながら答える。
「オリエント・ゾディアックにいた頃は体が死体と同じだったからちゃんと水さえ飲んでれば数日なら食べなくても平気だった。そもそも食べてもほんのり味がする程度にしか感じないから食べてる感じしなかったし」
食べてしっかり味がする喜びも感じているのかと思うと少しは同情ができたが、それでも尋常じゃない量を食べているのが引っ掛かり、質問を続けた。
「じゃあオリエント・ゾディアックに入る前は?」
「最初に死ぬ前……フリージアで一番食べてたのも……ボクだった」
ひかりは笑い話としてあっけらかんと話しているが、こちらはそんなテンションではいられない。家出中の身であることから親からの援助は期待する方がおこがましい。しかしこのままでは食費だけで家計が火の車になるのも時間の問題、食洗器に食器をすべて入れてから苦渋の決断を下し、小町部のグループトークで相談する。つい最近まで故人扱いだったひかりはスマホを持っておらず、その代わりとして通信機器にもなっていたMUJINAも6枚の羽根の力を開放した際に修理不可能なレベルなまでに故障したため彼女抜きでも罪悪感のない形で相談ができる場所でもあった。
この事態に救いの手を差し伸べてきた者が現れる。
「(いろんな意味でこの手はあまり使いたくなかったけど……)」
救いの手をつかみ、決戦の日を待った。
お前らそれでいいのかってムーブを敵味方どっちもかましてましたね。




