第弐拾壱幕の拾参
二兎を追う者は一兎をも得ず?二兎とも取れ。
「なっ……両方ってどういうこと!?」
目論見を打ち砕かれたかぐやの声を背に、ひかりはこの答えを出した意味をあっさり答える。
「好きな方、って言ったよね? ボクはイナリも、蓮も、両方好き。だからどっちも選んだ。それだけ」
深い考えなど一切なく、あっけらかんとした回答にかぐやは苦虫を嚙み潰したような表情をする。
「重力でぺちゃんこにしなさい!」
視線だけ皐月に向けて彼女をにらみながら吐き捨て、かぐやは乱暴に扉を開けて応接室から出ていく。
入ってきたドアから出てもナフ・ヴァルキリーがいる、それ以前にドアの前は皐月が陣取っている。ならば一か八かひかりの翼が再び出ることを信じ、あおいは蓮を連れてイナリを抱えたひかりとともに意を決してガラスが破られた窓から飛び降りた。
「危ない!」
皐月はそう叫びながら、彼女は重力弾を3発放つ。それらは狙い通りあおい、蓮、ひかりに命中した。
戦場となった廊下ではなんとかかんなを逃がすことはできたが、振袖小町が不利な状況は変わっていなかった。
「あーあ、手間取ってる。ストレス発散したいし、あいつがいないといろいろと困るから手助けしよっと。排斥制環」
右掌からリングを出し、さくら、アイリス、かりんに向けて放つ。飛んでいったそれは彼女たちの頭に装着される。
「これは!?」
「はっ!」
かぐやが右手を前に出すと、リングが締まっていきその痛みで振袖小町は身動きが取れなくなる。自分で取ろうとしても外れず、その隙にかぐやがひまりの手を取って戦場から消えていった。
物理学的に、物が落下するとその速度はどんどん速くなる。それが速ければ速いほど落下時の衝撃は強くなる。イナリはまだしも、ひかり、蓮、あおいの体重であればこの高さから飛び降りたのでは無事では済まない。
「うわああああ!」
「落ちるー!!」
「ほんとに大丈夫なの!?」
「しまった、今まで空飛べたからその時の感覚でやっちゃった……ごめん」
到底ごめんで済まされる事態ではないのはわかっているがひかりは謝罪する。一度限りの奇跡を信じて再び翼を出そうと背中に力を込めるが、出る気配など一切感じなかった。そこに、頭上から降って来た弾があおいたち3人と、ひかりに抱かれていたイナリを貫いた。
「……あれ?」
「急に遅くなったような……」
あおいは首を衝撃の発生源があったと思われる上に向けると、いつもよりも早く首が動く。これで彼女は真相に気づく。
ひかりたちに直撃した重力弾は、彼女たちに当たりはしたものの当てた者の重力を軽くする方の弾だった。その影響を受け、彼女たちはパラシュートを付けているかの如くふわふわとゆっくり落下していった。
ちょうどかんながビルからの脱出に成功し、エントランスの外に出られたのと同時に3人と1匹は無傷で彼女の目の前に着地する。
「あなたたち、もういいでしょう。今日のところはこのくらいにしておいてあげなさい」
ナフ・ヴァルキリーのヘッドギアに通信が入り、一斉に撤退する。それとともに頭を締め付けていたリングは消える。完敗とはいかずまでも、振袖小町側から見れば命拾いという形になった。
なんとか命拾い、強敵をどう攻略する?




