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華のお江戸の振袖小町  作者: 水虎
第弐拾壱幕「太陽」
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332/338

第弐拾壱幕の拾弐

いわゆるフレネミーは人生でいてほしくない存在の上位に入る。

 蓮が囚われた影響はさくらたちにも出て、すぐさまかぐやと皐月を除くナフ・ヴァルキリーに追いつかれてしまう。

 少しでも逃げることができるようその場で立ち向かうが、人数は振袖小町側が彼女たちの半分以下、一気に攻撃されて劣勢に立たされる。これまでとは違いオリエント・ゾディアックが一切絡んでいない相手なうえ今いるのは姫たちの本拠地であることを除けばごく普通のオフィスビル、普段のような派手な大立ち回りをしたところで元通りになる保証はないのも苦戦する理由でもあった。

 人質を取られた状態のひかりとあおいは人数的有利が帳消しになってしまうほど対処に手を焼いていた。容赦のないかぐやからの攻撃は片手にイナリを抱えながらでもそれを感じさせず、二人は大きなダメージを受ける。

「そうだ、あんたに好きな方を選ばせてあげるよ。そこでへばってる女装した変態と、このキツネ。どっちか片方だけ見逃してあげる。ただし……選ばなかった方はここでさようならー!!」

 かぐやは大笑いしながら究極の二択を押し付け、それに合わせて皐月は最大級の重力弾の準備をする。あおいは対策を練ろうと立ち上がるが……。

「そこのあんたは手出し口出しするんじゃないよ。これはあたしとこいつとの取り引きなんだから」

 ひかりは答えを出すことを迫られ、あおいはその行く末を見守るしかなかった。

「(この状況を突破するにはどうすれば……)」

 視界にふと窓ガラスが映り、今の自分が見える。

「(もし今翼が出せるのなら……)」

 今の自分に翼を出すことができるのならば、滑空しながらイナリを取り戻し、そのまま脱出すると想定した。しかし、今はそれができないうえに蓮を救えない。それに代わる方法がないか思案したひかりが出した答えは……!

 小菅はボロボロの紙切れを持って、痛む足を引きずりながらとある町の僻地にある寂れた廃病院を訪れていた。そのエントランスにはよく見ないとわからないほどの小さな看板があり、そこには「薮下総合診療クリニック」と書かれていた。

 本当に営業しているのか半信半疑どころか頭の中を99%が疑を占めた状態で扉を開けると、アナウンスが流れ始める。ドアを開けるとセンサーが反応し、それが相手に伝わる仕組みのようだ。

「……ようこそ。誰の紹介か教えてもらおうか?」

 小菅が紹介者としてカルネロの本名である毛利章広の名前を告げると、アナウンスの声の主は突然狼狽え始める。

「まさか、そんなはずは……」

「なんだよ、できないのかよ? とにかく、俺はあの胡散臭いおっさんからここを紹介された、早く俺の足治してくれよ、できるんだよな? そうだよな!?」

 スピーカー越しにまくし立てて詰め寄る小菅の声に彼の思い詰めている現状を感じ取った医師は、彼を待合室に通した。

 ひかりは部屋の隅まで向かい、そこから助走をつけてかぐやめがけて走り始める。

「ひかり!?」

 そのままかぐやとすれ違いざまにイナリをインターセプトする。彼を奪還された瞬間、かぐやは喜びの声を上げる。

「はい決まりー! ひかりのせいで女装の変態の墓場はここに決定ー!!」

「ひかりのせいで」という部分を強調して心底嬉しそうに上がった声にあおいは腸が煮えくり返るほどの怒りを覚える。もともと信頼関係が築けていなかったひかりの判断によって、彼女は絶望に包まれる。

「蓮をお願い!」

 しかし彼女の思惑は違っていた。言われるがまま、あおいは蓮のもとへ向かう。時間の経過で彼の周りに強くのしかかっていた重力も、元に戻ってきていた。その証拠に、腕を上げてみるとこれまでとは違い簡単に上がった。

「ついてきて!」

 そう言ってひかりは撃銃・鋼鉄を構えて窓ガラスをぶち破った。これには誰もが開いた口が塞がらなかった。その途端、強風が室内に吹き付けて皐月の頭に付いていたヘッドギアが外れる。

上野かぐやという人物は我が人生で出会ってきた嫌な女の煮凝りをモデルにしてます。

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