第弐拾壱幕の拾壱
悪の組織らしいことをおっぱじめました。
「……あのキツネは……! 捕らえなさい!!」
「はい、我が姫」
振袖小町の後ろにイナリがいることに気づいた姫は捕獲を指示する。その指示に皐月とかぐやが従う。
皐月は重力弾を再び発生させ、今度はイナリの周りの重力が一気に軽くなる。
「体が浮いてる……ぐぇっ!!」
突然軽くなった重力に抗えず、天井に打ち付けられて彼は気絶する。
振袖小町は救出に向かおうとしたが防がれてしまい、その間にかぐやがイナリの首を右手でつかんで人質に取る。
「さあ振袖小町! このキツネがどうなってもいいの!?」
「ボクが行く!」
イナリの救出にはひかりが向かった。
「ここは私に任せてみんなは外へ!」
皐月とかぐやを除くナフ・ヴァルキリーがひなたを背負って逃げようとしている蓮とかんなを追い始めるが、あおいが追手をせき止める役を買って出て残る。
「その声、もしかしてあなた……!」
久しく聴いていなかったが、かつては毎日耳にしていた声でひかりはイナリを人質に取った黒いチマチョゴリを模したFFVを着たナフ・ヴァルキリーの正体に気がつく。かぐやも目の前にいる振袖小町の顔を改めてしっかり見つめる。
「あんた、まさか生きてたなんて……!」
ひかりが驚愕一色の声だったのに対し、かぐやはそれに安堵が入り混じった声を上げた再会となった。
「ま、いっか。おかげでひとつ気づくことができたから」
そう言ってかぐやはひかりに向けて銃口を向ける。
「あたしは……人殺しじゃない!」
高笑いを始めた彼女の発言に、彼女による悪意を一身に受けた本人はおろかその場にいた者を凍り付かせる。
「違う、ボクは一度……」
誤解を解こうとするひかりの声も空しく、彼女は叫び続けた。
「よかった……! あたしのこの目でうっざいあんたが野垂れ死ぬ瞬間を拝むことができる!」
支離滅裂な言動が戦慄の空気を生み出す。そんなことお構いなしに皐月は重力弾を発生させる。さくらが自分から当たりに行って盾になろうとしたが、精度の高さを発揮して蓮に命中させ彼の周りの重力を大きくして応接室の隅に捕らえる。
「蓮!」
あおいは動揺し、かぐやと皐月を除くナフ・ヴァルキリーが先に応接室を脱出したかんなとひなたを追って外に出ることを許してしまった。
ロンはカルネロとの電話で自分たちに挑戦状を叩きつけられたことを知る。
「君たちにいいニュースだ。我々の当初の目的を叶えるための大事なピースを発見することができたんだ」
「なっ……まさかあれが見つかったというのか!? それはどこに!?」
冷静さを欠いた声で話すロンとは対照的に、カルネロはいつもの調子で話を続ける。落ち着きを失った彼の声に、ティーガーたちはただ事ではないことが起こったと感じていた。
「まあ待て。ただ探すだけでは面白くないだろう」
そう前置きして、彼はある提案をした。
「振袖のカケラはすべて集まるとこの世界を創りかえることができる、君のコードネームは辰の力を持つ振袖のカケラの持ち主であることから名付けた……そこでだ。世界各地に散らばった願いを叶える竜を呼び出すことができる7つの珠を冒険して集める漫画があるだろう? それになぞらえた勝負をしようと思ってね」
「……なに?」
傍から聞いていてもまったく意味が分からない提案だったが、これこそがカルネロが送り付けた挑戦状だった。
今後に向かって話が並行して進んでいきます。




