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華のお江戸の振袖小町  作者: 水虎
第弐幕「知略」
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第弐幕の拾壱

いきなり壁ドンをかましてくるやべーやつ、それだけで済めばいいのですが……。

 彼の乱入に、あおいから物言いがつく。

「ちょっと! 振袖のカケラを賭けてさくらがネガボットと戦うんじゃないの!? なんなのあいつ!!」

「また変なルール付け足すなんてズルいぞ!」

 この抗議に対し、チュイは悪びれもせず言い放つ。

「ネガボットに勝てたら、とは確かに言ったよ? でも、この戦いは一騎打ちで、乱入者はいない、なんて言ったっけ? ズルいだなんてひどいなぁ、こういうのは解釈の違いって言うんだよ」

 減らず口もここまでくれば逆に大したものである。だが、あおいたちがこんな理不尽で一方的なルールに納得するはずもなく、さくらに壁ドンをしているティーガーのもとに2人で助けに行く。

「あれ、そっちからいくの? じゃあネガボット、僕らはあの商店街に行って、たくさんの人間を襲いに行こうか!」

「ネガ!」

 ネガボットは肩にチュイを乗せて商店街のある方向へと歩いていく。

「楽しいことになりそうだな~♪」

 一方、ピンチに陥ったさくらは戦っているのではなく、なんとティーガーに口説かれていた。

「なあ、俺のこと覚えてるよな? ほら、あの時……」

「あなた、誰……? 知らないし、会ったことない……」

 面識はないと返すさくらに、心底がっかりした絶望感と怒りを両方の拳に込める。

「……嘘だ、嘘だ嘘だ嘘だあああああああああああ!」

 彼の拳はさくらのすぐ近くの壁にめり込んでいた。直接殴られたわけではないがそれよりも恐ろしい執念を感じてさくらは肝を冷やす。次の瞬間、殴った部分の壁が崩れ、その鋭利な破片がこぼれ落ちてさくらの左頬にぶつかり、切れて血が流れる。それを見たあおいは大急ぎでさくらのもとに駆け付けようとするが、それより前にティーガーは、戦慄して引きつっているさくらの頬から流れた血を左手でそっと優しく拭い、そして目の前で彼女の血を口にした。

「ああ……! これが俺の愛する人の血液……、なんて暖かくて優しいんだ……!」

 恍惚とした表情を浮かべられ、目の前でこんなアブノーマルとしか言いようのない行動をされてしまっては、いくら整った顔立ちの持ち主だったとしても幻滅を軽く通り越して呆然とするしかない。それに加え、ここまで蓄積したダメージが響きその場で崩れ落ち、さくらは立ち上がれなくなる。持ち主の気力の低下によるものか、地面に刺さっていた聖剣・紅も光となって消えていく。その光景を目の当たりにした蓮は、ティーガーに駆け寄って彼の胸ぐらをつかみ叫ぶ。

「さくらに何しやがる! ずっと聞いてりゃ前に会ったことあるみたいなこと言いやがって!」

「会ったことがあるのは事実じゃないか。それに、君たちとも会ったことがあるぜ。なあ、スポーツ万能な熱血少年の水崎蓮君と、その双子の妹で頭脳明晰な水崎あおいさん?」

 名前こそ出なかったがTVにまで出てしまったさくらと違い、自分たちのことまで知っている、しかし誰なのかがわからず引っ掛かりを感じる二人。

「さくらにお前たちはいらない、さくらには俺さえいればいいんだよ! さっきのお返しだ、付和雷導(ふわらいどう)!!」

 右手を空にかざし、雷を放つティーガー。標的となった蓮はなんとかよけるが、雷は蓮の立つ場所を追い続けている。

「どうなってんだこれ!?」

 雷の直撃を避けるため、蓮は走って逃げる羽目になる。

「こいつはターゲットに当たるまで消えずに追い続けるのさ。食らうのが嫌なら、さくらのために消えてくれるよなぁ……!? さて、次は君だよ、水崎あおい!!」

 ティーガーは、再び右手を空にかざし、雷を放とうとする。そこに、あおいが右手をつかんで阻止する。

お互いの記憶が矛盾している、ただの記憶違いとか視点が違っていたから差異があったとかならいいですが……。

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