第弐拾壱幕の玖
姫の目指すものとは。
「さあ、ナフ・ヴァルキリー! 役立たずともども始末しなさい」
彼女たちが変身前に装着していたブレスレットが変形した武器が向けられる。その時!!
「待ちなさい!!」
その声とともに、扉が開く。その奥に立っていたのは、さくらを除く4人の振袖小町だった。
「振袖小町!」
二人が変装していることはあらかじめ聞いてはいたが違和感は拭えずも、他人のふりをしてそれを貫く。
「色鮮やかに、咲き誇る!」
ひかりが名乗り口上を突然上げ始める。あおいたちは慌てて合わせる。
「「「「「華のお江戸の振袖小町!!」」」」」
ぎこちなさは残ったが名乗りとポーズは決まる。姫が拍手とともに声を発する。
「振袖小町の皆さん、ようこそ、我が神聖なる城へ。歓迎いたします」
「私たちに用があるのなら、この人たちを解放してください! それと倒れている人を休ませてあげて!」
アイリスの要望に、姫は耳を貸そうとはしなかった。彼女たちが振袖小町の顔をしっかりと目に入れ、ナフ・ヴァルキリーの銃口は振袖小町に向けられる。しかしかぐやはそこには絶対にいるはずのない顔がいたことに一瞬戸惑って他のメンバーよりも銃口を向けるのがワンテンポ遅れる。
「その前に、あなたたちが私たちの崇高な目的に協力するかの意思を確認しましょう。あなたたち、下がりなさい」
姫の指示に従い、武装したナフ・ヴァルキリーは銃口を下げて壁際に半分ずつに分かれて立つ。
「元始、女性は実に太陽であった」
姫は明治時代から昭和にかけて日本における女性の権利獲得や地位向上のために奮闘した活動家の平塚らいてうが女性による婦人月刊誌「青鞜」に寄せた有名な文章「元始、女性は太陽であった」を語り出す。
現役の高校生である振袖小町たちも、社会の授業で習ったことがあるだけにこの文章のざっくりとした内容や書かれた意図は知っていた。
「今、女性は月である。他によって生き、他の光によって輝く、病人のような蒼白い顔の月である」
姫による有名な文章の冒頭の朗読が終わる。それを聞いていた振袖小町たちのうち、あおいはだんだんと彼女の考えがなんとなく理解できていた。
ラパンに案内された雑居ビルの掃除を続けるロン達。モチベーション維持に苦心しつつ、だんだんときれいになっていった。
ロンが机の戸棚を開けると、Dianthus from.JPNが解散直前に出したベストアルバム「Best Thank you for you」が見つかり、ティーガーが郵便受けを掃除していると、中にこの場所の前の持ち主が経営していたと思われる企業の看板が入っていた。
「ロン、こんなものがあったんだが」
「こっちにもちょっと気になるものがあった」
ティーガーとロンがそれぞれ発見した物を見せあい、ここが一体どういう場所だったのか二人はそれぞれ推測し始めた。
「みんな、ちょっと手を止めて集まってくれ」
ロンがみんなを集合させる。一時でも掃除をしなくて済むとゴーダとセルペンテは早足で駆けつけ、キマは呆れたようにゆっくりとその後を追いながらやってくる。集まってもらった意図を説明し、発見したCDと看板を見せる。
「これは……ラパン?」
「さくらに比べたら大したことないな。そもそも全員同じ顔に見える」
「ちょっと、若いんだからそんなおっさんみたいなこと言うんじゃないの。ラパン以外の子は初めて見る顔ね。アイドルと言うだけあってかわいい子揃いではあるけど、どうも華がないわね」
「それは言えてるな。安い酒もつまみや飲むシチュエーションによっちゃ高級な酒に勝るうまさになるが、素材が活かせてねえ」
一方セルペンテは看板が気になるようだった。先日食事をおごってもらった蘭がいたことに気づき彼女の意外な過去を知る。彼女のルックスならそれも不思議ではないという個人的な感想を心にしまいながら、スキロスが尋ねる。
「バードメット……? 聞いたことありませんね……セルペンテ?」
看板を見た途端、彼は珍しく怒りを噛み殺したような表情で答える。
「ここがあの野郎の根城だったのか……!!!」
怨念を身に纏わせながら過去にこの事務所と何があったのかを語り出そうとしたその時、ロンのスマホに着信が入る。
底の知れない闇が振袖小町とオリエント・ゾディアックに忍び寄っています。




