第弐拾壱幕の漆
男女にはどうしても分かり合えない部分がある。
P&LはSNSアカウントで彼女たちのうちの一部を保護していることをSNSのアカウントで発信していた。代表は彼女たちの行動理由は家庭環境や学校などにあると主張していた。
不可解なことは続き、この事件のことはネットではにわかに話題になっていたがテレビや新聞などのマスメディアは一切触れていなかった。この国では「報道しない自由」が保証されているが、その不自然さにはネットを中心に疑念の声が相次いだ。
それから数日過ぎた日曜日、謁見の場に選ばれたのは繁華街近くにある大きなビルの一フロアだった。場所を調べたところP&Lの本部がある住所と一致することがわかった。素顔のまま振袖小町として向かうことは危険が伴うため蓮とかんな、そしてボディガードも兼ねてさくらが変装して向かうこととなった。
「なあ、本当にやるのか……?」
あおいの服を着せられ、かりんが持っていたロングヘアのウィッグをかぶらされた蓮が不安そうにかんなに尋ねる。そんな彼女もかりんから黒髪のウィッグを借り、帽子をかぶって太いフレームの伊達眼鏡をかけていつもとは違う地味な服装をしていた。
場所が場所なだけに高校生だけで行くにはとても危険だったが、太陽が出ている時間だったこともあり反社会的勢力に属すると思われる人物とはエンカウントせず、これ以上先に進むのはダメだねということにはならず無事に目的地に到着できた。中に入ろうとしたとき、蓮は少し前と今回の経験で浮かんだ疑問をさくらとかんなにぶつけてきた。
「なあ、なんで女子はこんなに風通しの良すぎるものを当たり前のように着ることができるんだ……? 特にかんななんてあんなに短くて大丈夫なのかよ?」
下は一応スパッツを穿いてはいたが、それでも普段ではありえない感覚が下半身を通り抜けていくことになぜ世の女性たちは平気なのか蓮にはどうしても納得がいかず、考えたこともないことを質問されて違う立場からでは考え方がこれだけ変わるのも無理はないと感じながら質問の答えを出す。
「私は心も体も女だから小さいころからずっとスカートは当たり前で、風通しはそういうものだからもう割り切っちゃってる」
「短さは……他の子は違うかもだけど少なくともあたし的にはかわいいから。学校でよく担任とかがうるさいけど、これがあたし流だから」
異性という違う立場からの意見が腑に落ち、自分は違うがそういう考え方があるのかという新たな知見を得ることができて蓮はすっきりした気持ちとともにいい経験にもなったと感じ満足感を得ていた。もう一度体験したいかどうかは別としてだが。
振袖小町が謁見に呼ばれたが、自分たちは関係者ではないことを装うため3人は謁見の場として選ばれたフロアにある団体の見学者として進み、別行動を開始する。どこか物々しい雰囲気が広がるビルの中を進み、エレベーターに乗って目的のフロアに向かう。あおいたちは振袖小町に変身し、二人の後を追った。
P&Lの看板のすぐ横にあるドアをくぐり、かんなが受付にある内線に到着した旨を伝えてしばらく経つと、二人の前にひなたが現れる。
「もしかして、ひなってぃー!?」
「……ご案内いたします」
ひなたはDianthus from.JPNでは海外で有名大学を飛び級で卒業したインテリとして売り出しており、解散後は頭脳を買われて金丸ファウンデーションの研究員として活動する傍ら、かんながお嬢様学校ではなく一般的な高校に進学すると決心した際に彼女の家庭教師として高校受験のサポートをしていた。しかし彼女はかんなとは初対面であるかのごとく一来客として対応した。その表情はどこか疲弊していると感じられた。
彼女の案内で施設内を見学していると、その途中にある部屋の中にたくさんの少女がVRゴーグルをつけてじっとしていることが確認できた。中から声は聞こえず、集中できていないものは皆無であった。
「あれは何をしてるんですか?」
何の気なしに彼女たちが何をしているのかさくらが尋ねるが、ひなたは回答せず案内を続行した。別の部屋では少女たちが同じようにVRゴーグルをつけて不思議な振り付けの踊りを踊っており、これについての質問も回答を拒否されてしまった。
答えが出されずとも、3人は室内の少女たちを包んでいた雰囲気にどこか不気味さを感じてならなかった。
見学が終わり、このまま帰されそうになったが、さくらが代表と直接会って話がしたいと希望する。ひなたは代表に連絡し、許可を得る。
「どうぞ」
自然な形で中に入れたけど……怪しさマックス。




