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華のお江戸の振袖小町  作者: 水虎
第弐拾壱幕「太陽」
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326/328

第弐拾壱幕の陸

怪しい団体が平和を脅かす。

 そのとき、蓮とスマホを持っていないひかり以外の全員のスマホから緊急地震速報に似たけたたましいアラームが鳴り響く。恐る恐るスマホのロックを解除すると、白いベールをかぶった女性が座りながら話している動画が開始された。

「皆様こんにちは。私のことは……姫と呼んでくださるかしら」

 自らを姫と名乗る胡散臭い謎の人物が登場して始まった動画は、本来見るはずのそれを見る前に出てくる広告のごとく見たくもないのに出てきたうえに、どこか押しつけがましい演説ともいえる内容で、一切興味関心がなかったため動画を止めようと思ったがなぜか止まらず、嫌でも彼女の演説を聞かざるを得なくなってしまった。

 すると、耳に入っていく言葉に女子たちはだんだんと意識が遠のいていった。

「蓮! なんかこれやばいよ!」

「ああ!」

 蓮はさくら、あおい、かんなの肩をゆすり、イナリはアイリス、かりん、ひかりの指に噛みつく。彼女たちは意識を取り戻す。

「あれ、蓮……?」

「私たちは……?」

「よかった……」

 ほっとしたところで演説の動画は終わりを迎えようとしていた。最後に放たれた言葉は、彼女たちを驚かせるものであった。

「最後に、振袖小町の皆さん。あなたたちもこの動画を目にしていることでしょう。あなたたちには私に謁見する権利を与えます。日時と場所は連絡させていただきますのでお待ちください。それでは、お待ちしております」

 これにて動画が終了する。一体何だったのか訳も分からない時間が終わり、あちら側は自分たちの連絡先など知らないだろうと高をくくっていたその直後、かんなのスマホに一通のメールが届く。

「本当にメールが届いたんですけど……」

 いつも明るく快活なかんなですらも顔面蒼白になる怪奇現象に、これは何かあると踏んだ小町部は意を決して「謁見」に臨むこととした。しかし、姫と自称する人物がなぜかんなの連絡先を知っているのか、振袖小町の後方支援を務めていることが分かっているかのような対応をしてきたのか、謎が更なる謎を呼ぶ奇妙な時間が過ぎていった。

 同じ頃、そんな演説がされていることなど知る由もない廃屋の面々は彼らへの新たな指令の詳細が説明された。

「……というわけだ。これに際して、ズウォートとムング以外の君たちにもコードネームを与えよう」

 京田だけは目を輝かせているが、他の3人は白けた目をしていた。それでもお構いなしにコードネームを発表する。

「まず、石神君。君のコードネームはウーコン。北沢君はバーチェ」

 二人は神妙な面持ちでコードネームを受け取る。特に石神は飲酒後に飲むドリンク剤、はたまた排泄物のようだと怪訝そうであった。

「京田君は、ガーゼン。小菅君は……ユロン」

 子どもの遊びのようで馬鹿らしいと言わんばかりの表情の小菅に対し、ありがたき幸せだと物語る面構えの京田。

「さっそく始めてもらいたいのだが……」

「待てよ!」

 カルネロの指示を小菅が遮る。

「なんだね、ユロン君?」

「まず、その変な呼び方はやめろ。それに、あんたはこの足でそんな遠くまで行けって言うのかよ。これって無茶ぶりだよな、そうだよな!?」

 怪我がまだ治っていない足を指して、悲痛さのこもった声を上げて叫ぶ。鬱陶しい脳筋を始末できたと思ったらまた新たな問題が頭をもたげる、しかし彼にとってこれも想定の内だった。

「君は早とちりをしているようだね。今すぐ行けとは言っていないよ。むしろ君の足のことはこっちで何とかできないかと思っていたところさ。君はセカンドオピニオンという言葉を知っているかい?」

 ニヤリと笑って出してきた提案に、小菅は固唾をのんだ。

 不気味な演説動画が突然流れる怪奇現象は、全国で報告された。それもすべて小学生から高校生、つまり未成年の女子が所持あるいは使用しているPCやスマホから再生され、それを見た者の中には突然家出を始めて警察などに保護されたケースが全国で発生し、そのまま戻っていない少女もいた。

 警察は保護した少女たちに家出の動機を聴取していた。しかし、彼女たちは口を揃えて同じ答えだった。

「動画が始まってすぐに話している内容が頭を駆け巡り、『私のもとに来なさい』っていう女性の声が聞こえてきた、そこからは覚えていない」

 対応しようにもお手上げ状態だった。彼女たち全員に共通していたことは、いずれも東京を目指していた、都内在住の場合は都心部にある繁華街に向かっていたことだった。しかし、その先に何があるのかまではつかめず、演説動画のアーカイブも残っていない有様、この状況では演説した人物がどこの団体に所属している何者なのかは雲をつかむような話にならざるを得なかった。

姫を自称するのは大抵ヤバい女。そういうことです。

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