第弐拾壱幕の伍
元敵による元同僚の素性公開、まだまだ続く。
こんなに個性が違う面々が集まっているにもかかわらずいつも息が合っていたことは自分が身をもって味わった。その中に入り新たな力になることへの期待と、この中に自分が入って不協和音にならないかという不安が入り混じる瞬間でもあったが、それに背中を押される感覚を覚え、使命感に燃えていた。
このまま考え続けていても答えが出るわけではないので質疑応答に戻ると、今度は蓮が手を挙げた。
「可能な範囲でいいから、オリエント・ゾディアックのメンバーがもともと何をしていたか、どんな世界を望んでいたか教えてもらえるか?」
少し時間を置いてから、ひかりは口を開く。
「どんな世界を望んでいたかとか、どんな死に方をしたとかは話したことがないからわからないけど、何をしてたかは知ってる範囲だと……」
そう前置きしてから、彼女がわかる範囲内で彼らの前歴を紹介する。小町部がこれまでに自力で正体を突き止めたティーガーとハンジール以外のメンバーは、チュイは中学受験に疲弊していた小学6年生、ボヴィーニは具体的な前歴は教えてもらえなかったが面倒見がよかったという。ロンはどこかの資産家の使用人、セルペンテは売れないロックバンドの元ボーカル兼ギタリスト、ゴーダは傭兵として世界中を周っていた、カルネロは詳しくはわからないが科学者だったことだけは確実にわかっている。キマは海外で活躍していたダンサー、スキロスはとある事件を追って志半ばで殉職した刑事だったと語った。
「ラパンは?」
「アイドル」
完璧で究極にざっくりとした答えではあったが、ここまでどうも元気がなかったかりんとかんなが食いつく。
「マジ!? やばたん!!」
「えっ、誰!?」
「ごめん、もともとアイドルとか芸能関係は詳しくないから名前までは覚えてない……。ただ漢字の読みが難しかったのと、今も活躍してる。これだけは言える」
突然の態度の急変に驚きつつひかりは答えるが、期待に応えられなかった回答にがっかりする。
「ところでさっきまで二人とも元気なかったけどどうしたの?」
さくらからかりんとかんなに向かって質問が飛び出る。
「それが……」
かりんの話によれば、Dianthus from.JPNの活動時は推しである卯月以外はほとんど眼中になく、卯月への一極集中を発端とする解散への道を無意識のうちに自分も舗装してしまっていたことに対する彼女なりの一種の禊として、解散後はソロデビューした卯月と並行しながらできる限りの範囲で彼女たちのその後を追い、応援していた。
しかし、引退していたメンバーのSNSアカウントが数日前に突然再稼働して意味深なメッセージを残し、それ以外のメンバーもこの数日の間に次々と突然の芸能活動休止を発表したというのだ。
「それにこれ見てよ」
彼女が見せたネットニュースの記事によると、ここ数日元Dianthus from.JPNのメンバーをはじめ、彼女たちと年齢の近い少女たちが次々と行方をくらます事件が全国で多発しているという。その多くは複雑な家庭環境や、学校での問題を抱えていた。
彼女たちの安否が気になってしまい、かりんは遂に泣き出してしまう。
「そのせいで今日やるはずだったファイナルアイドルの配信が中止になっちゃって……ぴえん」
「ファイナルアイドル」とは有名プロデューサーが手掛けるユニットのメンバー選抜オーディション番組のことで、Dianthus from.JPNの元メンバーの一人である新橋杏夏がこれに参戦して心機一転と再起を図っていた。だが、彼女と連絡が取れなくなり現場にも現れず、企画を辞退する意思表示もしていないのでは続行のしようがなくなってしまった。この番組は生配信が売りの一つでもあるため、参加者の一人が突然の失踪をしてしまっては急遽参加者を追加募集しても今後の配信は一時的にストップせざるを得なかった。
視聴者はもちろん番組側も混乱しているようで、遠い昔に地球に飛来したロボットによって力を授けられた人間の子孫の中から、現代に現れた巨悪と戦うための戦士を5人選び出したはいいが、戦いが始まって少し経った頃に戦死者が出て欠員が出たとしても実は国内のみから選んでいたから対象外になっていた外国にいた子孫が来日してすぐに補充要員が出てきたのとは訳が違うのである。
今泣いたカラスがもう笑ったと言わんばかりのコロコロと代わる二人の表情に周りは困惑する。特に本当の意味での付き合いが浅いひかりは翻弄され、二人がどんな人間なのかつかめないでいた。
突然番組の出演者が降板騒ぎはもう勘弁してほしいですね。




